交通誘導員の誘導ミスで事故が発生した場合の責任は?信頼の原則って何?

道路で工事を行っている時、警備員が片側通行の指示をしている場合に出会った時があると思います。その場合に、交通誘導を行っている警備員がミスを行って事故が発生した場合、裁判所の判断はどうなるのでしょうか?今回、警備員誘導のミスによる事故法律責任を詳細に説明します。

交通誘導員の指示に従う義務

警備員が、駐車場の入り口や片側通行の出入り口などで交通の誘導を行っています。この業務は第2号警備業務の交通誘導警備にあたります。そして、警備員の配置は、地方自治体の条例等により、道路工事の等のため、道路使用許可の申請の際には、警備をおこなう人の配置が義務づけられています。

また、通路や運行の場合によって、道路上の安心と安心を維持するために必要な場合、道路や駐車場出入り口には、警備業法で定められた業務検定に合格したものを配置しなければならないと警備業法でもさだまっています。このように、交通誘導員の設置は、地方自治体の条例や、警備業法といった法律においても当然に義務づけられています。では、わたしたちは、車を運転する時に、警備員がおこなう指示に当たり前のように従っています。法律上、このような交通誘導の指示に従う義務はあるのでしょうか?結論から申し上げると、道路交通法という法律上、警備員の指示に従わなければならないという明確な理由や根拠はありません。業法は、以下のとおり定めています。

警備業法 (警備業務実施の基本原則)
第15条 警備の開始や警備する人は、業務をするにあたって、この法令で特別な権利を与えられていないことに注意をはらうと同時に、他の人が持つ権利や他の人がもつ自由をおびやかし、また、個々の人や大勢の人の誠実である動きを邪魔してはいけない。(参考 業法 15条 https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=347AC0000000117 )

警備業務で交通誘導を行うにあたって、特別な法律的な権限は持たずに行われています。また、道路工事現場等で、人や車両の通行を防止し、一般交通に与える迷惑を緩和するという目的の中で、誘導を受ける人やドライバーの自発的な協力をひきだして行われないといけないとされています。

また、道路交通法上も警備員の指示に法律上の根拠がない旨定められています。権利がない中での都度協力となりますので、誘導の指示を行った警備員の指示に従ったという理由だけで、ドライバーの安全配慮義務が免除されないことは注意が必要です。結論は、警備をおこなう人は、通行人やドライバーに対して強制する力で誘導が行えない。ドライバーや通行人は誘導に従ったからといって、事故の原因を警備員に求めることはできないこととなります。

交通誘導員のミスで事故が発生した場合の責任

交通の誘導を行う警備員が指示をミスして事故発生のケースは、どのように判断を裁判上なされるでしょうか?死亡事故は、このような判例にあります。北九州市で発生した交通誘導ミスの事故においては、警備員の誘導ミスにより二人が死亡する事故となりました。通常、警備員が誘導する場合、法律上、誘導に従う義務がないため、警備員の刑事責任に問われるケースを少ないです。この事故では、警備員自身に事故発生、過失責任が大きいと判断して、禁固1年6ヶ月(執行の猶予3年)と実刑の判決が決定しました。

また、誘導ミスの原因によって、事故発生した場合、刑事上の責任まで問わないまでも、民事上責任が問われるケースが多いです。警備個人だけでなく、警備の法人に使用者の責任を問われ損害の賠償の対象ケースとして多くなります。なぜなら、民事上の責任は、事故発生の原因となった人や法人に対して損害賠償を負わせる制度になっているからです。このケース、警備する人に法律における権利がない点と誘導の間違いを行ったケースに損害の賠償を問わないことは、法律問題を考える上で、少しも関係性がないです。(参考 アトム法律事務所 https://xn--3kq2bv77bbkgiviey3dq1g.com/keibiin-jiko/ )

誘導ミスの場合は民事上の責任は免れないことは明らかだと説明してきましたが、どれほどの過失割合となるのか説明します。駐車場で警備員の誘導ミスにより、車両がポールや壁に接触してしまった場合などの警備員の不十分な誘導による単独事故の場合、過失割合の判例は、警備員と運転手の過失割合は3:7と判定されました。

続いて、片側交互走行時に工事車両との交通事故の場合、よく見られるケースだと思います。工事現場の両端に簡易信号機が設置され、誘導員が旗によって、工事車両の搬入と搬出の誘導を手信号で行っていました。ドライバーが簡易信号を見誤り、赤だったにもかかわらず、白旗を目印に車を発車させてしまい、工事車両と接触事故を起こしてしまいました。この場合における過失割合は、警備員対運転手は、1対9になりました。警備員の過失内容としては、簡易信号機のみを信用して安全に十分配慮しなかった点にあります。

死亡事故のケースは、刑事事件の責任にとわれる判例はあります、一般的、民事事件として責任を追及され、過失割合により警備会社、警備員個人の過失が追及される場合がほとんどになっています。また、警備員個人だけでなく雇用主である警備会社にも使用者責任、判然配慮義務違反などの法律上の責任が問われます。警備会社も日々の警備員の指導・管理は、十分に行うことが求められています。

信頼の原則とは?

信頼の原則とは、被害を加えてしまった人が、被害に遭った人やそれ以外の人が危険を避けるための行動をするだろうと信じて行った場合には、その信じたことが社会的に当たり前だと認められる状況、判断である限り、もし被害者や第三者が信頼を裏切った不適切に行い、その結果、何かしらの被害が生じてしまった場合、その被害に関して、被害責任に問うことはない原則といいます。

例えば、交通事故では、片側通行工事現場、白旗が振っているため、通行可能と認識を行い、片側通路を走行している時に、もう片方の道から赤旗を無視して侵入してきた車と追突をしてしまった場合、白旗を信じて通行している車には問題がないと判断がなされるという判断がされるという事になります。

なぜなら、白旗を信じて通行していたドライバーは、白旗が通行可能であるということは社会的に当たり前のことであり、赤旗が通行止めであるにもかかわらず侵入してきたドライバーはその信頼を社会的に当たり前である信頼を裏切った行動をしたからです。この場合、過失割合で判断されないと最高裁判所の判断でなされています。

信頼の原則に従って、警備員が行う交通誘導も警察官の交通整理のように法律上の強制力がなくても、信頼の原則に従い、指示には従うことが社会的に当たり前だと認められており、それを無視した発生した事故には、加害者としての責任が問われると最高裁の判決でなされました。しかし、警備員自身の誘導には法的拘束力はないため、誘導の相違による事故はあくまでドライバーの責任となります。ただし、過失相殺の考慮対象となります。(参考 法律コラム 信頼の原則  https://legalus.jp/ )

まとめ

警備員の交通誘導には、法律上の強制力はありません。あくまで通行人やドライバーへ協力を呼びかける立場となります。そのため事故発生時に刑事責任を問われるケースはまれですが、事故発生時には民事上の責任は過失割合として問われます。そして、その責任は警備会社にも問われるケースが多いため、日々の業務においては細心の注意が必要です。

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