警備業法では国家資格として6つの「警備業務検定」が定められています。
第一警備に関わる「施設警備業務検定」と「空港保安警備業務」、第二警備に関わる「交通誘導警備業務検定」と「雑踏警備業務検定、そして、3号警備に関わる「貴重品運搬警備業務検定」と「核燃料物質等危険物運搬警備業務検定」があり、それぞれに2級と1級の資格があり、検定試験が実施されています。
今回は、運搬警備業務とも呼ばれる第三号警備の中でも最も特殊である「核物質などの運搬」に注目し、その最上級の資格である「核燃料物質等危険物運搬警備業務検定1級」について詳しく説明致します。
核燃料物質等危険物運搬警備業務検定1級とは
「核燃料物質等危険物運搬警備業務検定1級」とは、原子力事業などで重要な燃料となるウランや、それに準ずる危険物質を運搬するために必要な資格です。
「核燃料物質等危険物運搬警備業務検定1級」は、2級を取得してから1年間業務にあたることが必要とされており、1級は核燃料物質等危険物運搬警備業務について最上級の知識と技術を兼ね備えたプロと位置付けられています。
核燃料物質等危険物運搬警備業務検定1級取得のメリット
核燃料などの危険物質を運搬するには、「核燃料物質等危険物運搬警備業務検定2級」以上の資格者を運搬車両に1名以上配置することと法律で定められています。
核燃料物質等危険物運搬警備は有資格者がいないとできない仕事であり、有資格者がいない警備会社では運搬作業を引き受けられません。
作業にあたるもの全員に資格が必要なわけではありませんが、運搬には最低でも2級以上の有資格者を一人は同伴させる必要があることは、2級取得のメリットでも解説した通りです。
1級は「核燃料物質等危険物運搬警備業務」のプロ中のプロの資格であり、核燃料などを運搬できる資格が得られるとともに、有能な人材の育成や警備計画および警備の実務管理も担うことも業務とします。
会社のトップは警備の契約を結びますが、警備の中でも特殊である「核燃料物質等危険物運搬警備業務」については、知らないことも多いため、1級の合格者が警備計画や管理体制を考える必要もあり、会社や自分のためにも大きくステップアップしましょう。
核燃料物質等危険物運搬警備業務検定1級の取得方法
「核燃料物質等危険物運搬警備業務検定1級」の資格を取得するには、公安委員会が実施する試験に合格するか、国家公安委員会の登録を受けた事業所が開催する講習会を受講し、最後に行われる終了考査に合格する2つの方法があります。これは2級と同じシステムです。
講習会による資格取得
一般社団法人計瓶特別講習事業センターで行われる1級の講習は、直接試験の受験資格が「核燃料物質等危険物運搬警備業務検定2級の合格者であり、核燃料警備業務に1年以上従事しているもの」と定められているため、講習を受講する対象者も同じです。
2級では現役警備員と警備員を目指す人では講習の期間に違いがありましたが、1級では2級合格者ということが前提となっているため、講習期間は全ての人が2日間の講習を受講します。
講習の最期に終了考査があり、直接検定と同様の試験が行われ、学科と実技ともに100点満点中の90点を獲得すると1級の資格を取得できます。
また、講習による終了考査では、不合格の場合には再試験が受けられます。不合格の通知後に決められた場所で1日の講習を受けたあとに再試験を受けることができ、合格すれば資格を取得することができます。(これでも不合格の場合には最初からやり直しとなります)
なお、受講費用は33,000円で、再試験の場合には講習料金とあわせて13,200円が追加になります。
検定試験受験(直接試験)による資格取得のメリット
2級の場合には全てのことが初物尽くしのため、講習を受けることから学科や実技の基盤をつくることも合格への近道と考えられました。
しかし、1級の取得にあたっては2級取得で核燃料物質等危険物運搬の基盤は既にできているため、高いお金を払い時間も使って講習を受けるよりも、自分が不得意な分野を集中的に学習したり実技の反復訓練をしたりする方が有効だとも考えられます。
1級では2級の合格者のみが受験できるということもあり、ある程度の知識や技術も習得しているため、高い講習料を払うよりも一発合格の直接検定を目指すことで安く資格を取得できるというメリットがあります。
また、2日間の講習によって拘束されることもあり、時間に余裕がない方には直接試験は魅力的だといえるでしょう。
核燃料物質等危険物運搬警備業務検定1級試験について
「核燃料物質等危険物運搬警備業務検定1級」は公安委員会が行う試験を受験して、学科および実技にて100点満点中の90点を獲得することで資格を取得できます。
なお、講習会では終了考査の発表が約1か月後になるため学科と実技の両方を受けられますが、直接試験では学科の合格者のみが学科試験とは違う指定された日に実技試験を受験できることになります。以下に詳しく受験の内容や受験方法などを説明致します。
受験資格
核燃料物質等危険物運搬警備業務検定2級の合格者であり、合格証明書の交付を受けたあとに当該種別の警備業務(核燃料物質等危険物運搬警備業務)に1年以上従事したもの
試験内容
学科
①警備業務に関する基本的な事項(10点)
②法令に関すること(20点)
③核燃料物質等危険物質に関すること(5点)
④車両による伴走、および周囲の見張りに関すること(25点)
⑤核燃料物質等危険物質運搬警備業務の管理に関すること(10点)
⑥核燃料物質等危険物運搬に係る盗難等の事故が発生した場合における応急措置に関すること(30点)
実技
①車両による伴走、および周囲の見張りに関すること(30点)
②核燃料物質等危険物質運搬警備業務の管理に関すること(20点)
③核燃料物質等危険物運搬に係る盗難等の事故が発生した場合における応急措置に関すること(50点)
かっこ内の点数は本試験における配点になります。どこに重点をおいて勉強すればよいかが分かりますので、ぜひ参考にしてください。
また、各項目の詳しい内容については、募集要項や警視庁のホームページ(手続き→警備)で見ることができます。詳しい出題範囲や項目別の細かい配点が書かれて解説されていますので、ぜひご覧になって有効に活用してください。
合格率は非公表
公安員会によって実施される「核燃料物質等危険物運搬警備業務検定1級」の合格率は非公表となっています。
これは、核燃料物質等危険物運搬業務を行う施設がある都道府県での受験者が殆どであり、施設のない都道府県では全く受験者がいないこともあるため、受験者および合格率にもバラツキがあることから公表されていないと考えられます。
ただし、講習後に行われる終了考査の合格率は公表されており、77.2%(2006年1月から2021年12月末日までの累計データーによる)となっています。また、再試験での合格者は52.3%となっていることから、受験者の9割近くが合格して資格を取得したことになります。
一級よりも学科の範囲は広がるうえに、2級で学習した事柄もさらに深く勉強しなければならないにもかかわらず、この高い合格率は脅威ともいえます。他の警備業検定の合格率と比較しても、かなり高い合格率だといえるでしょう。
これは、ひとえに講習のおかげであると考えられます。独学では理解が難しい課題も専門講師が分かりやすく解説してくれるうえに、得点に大きく影響する部分を重点に学習させてくれるようです。
また、実技においても事故発生時の対応や管理業務などがあり、減点方式となっているので簡単に不合格となる難しい実技検定も繰り返しの練習とコツを教えてくれることで合格へと導いてくれます。
他にも特殊業務であることから、実際に業務を行っている人は、日々の仕事の中で訓練や学習をしているともいえるため、安易に取得しようと考える他の検定よりも受験者の真剣度が違うことからも合格率が高くなっていると理解できます。
核燃料物質等危険物運搬警備業務検定1級合格者になるには
直接検定の合格率は公表されていませんが、核燃料物質等危険物運搬警備業務検定1級の合格者になるには、講習を受けることが最も早く合格できる近道といえるでしょう。
ただし、核燃料物質等危険物運搬警備業務講習の受講者は少なく、とくに難しい1級となれば更に少ないようで、講習自体が行われていない自治体が多く見られます。合格の早道と断言できる講習が開催されていないのであれば、直接検定という方法しかありません。
なお、直接検定も2級の試験は実施しているものの、1級については見送りとなっている場所も多いようですので、事前に確認してください。
では、直接試験で合格するための方法ですが、身近に核燃料物質等危険物運搬警備業務検定の合格者がいるのであれば、遠慮せずに合格の秘訣や勉強方法を聞いてください。
とくに実技については経験者でないと分からないことが多いので、ぜひ話だけでなく実際に動作を見せてもらったり自分の実技練習を見てもらったりして指導してくれるようにお願いしましょう。
1級の受験者であれば、現在も核燃料物質等危険物運搬警備業務に携わっていることと思います。身近に有資格者や指導者のような方が必ずいらっしゃると思いますので、合格のために何とかお願いして教本なども借りて勉強してください。
正直なところ、ネット上や書店などでも核燃料物質等危険物運搬警備業務検定1級の情報は乏しく、独学で学習するならば何時間もかけて広範囲にわたって学習するしかありません。
それならば、1回目の試験は受かればもうけものぐらいに考えて受験し、2回目の受験で本気で合格を目指すということもできるでしょう。とにかく、あきらめずに前に進むことを強くおすすめします。
最上級の資格を取得して本物の警備員になろう
実務上では核燃料物質等危険物運搬警備業務検定2級を取得していれば、何の問題もなく業務が行えるのは事実です。しかし、警備のプロを目指すという観点からは、やはり1級を取得して名実ともにリーダーとして職務に就いていただくことが最良と考えます。
核燃料物質等危険物運搬警備業務は非常に危険な仕事でありますが誰かが行う必要があり、安全に核燃料物質等の危険物を運搬して届けるとともに、事故のないようにすることは国民の安全にも関わる重要な業務といえるでしょう。
ぜひ、ご自身と国家および国民の安全のためにも核燃料物質等危険物運搬警備業務検定1級の取得を目指してください。
(画像は写真ACより)
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