列車内では事件や事故が発生してしまうことがあります。乗客の安全を守るため、警備員は新幹線や在来線の列車に乗車し、車内の警備をおこなっています。
車内に警備員が乗車すれば、乗客としては安心感が得られることでしょう。
新幹線や在来線で活躍している鉄道警備員の業務内容について説明します。
列車や新幹線での警備の業務は?
警備員は新幹線や在来線の列車に乗車して列車内の警備をおこなっています。
列車内の警備は新幹線が主体となっていますが、列車内での事件がたびたび起きていることもあり、在来線の列車内も警備することがあります。
列車内でおこなわれる警備の内容としては、下記があげられます。
・列車内の安全保護
・痴漢対応
・不審物対応
・不審者対応
それぞれの業務について説明します。
列車内の安全保護
列車内を警備する警備員は、列車内の安全保護を第一に業務をおこないます。
列車の乗客は、目的地に向かうために列車に乗っています。乗客の多くは、列車内でなんらかの事件や事故に巻き込まれるとは考えもしないことでしょう。
しかし、列車内での事件や事故はたびたび起きています。場合によっては、運悪く列車内での事件の現場に居合わせてしまうことがあるかもしれません。
列車内でのトラブルを防止する対策として、列車内に防犯カメラが設置されている場合があります。防犯カメラを設置することで一定の対策が期待できますが、それ以上に効果が見込めるのは、車内に警備員が乗車することです。
不審な行動を取ろうとたくらんでいる人としては、警備員が直接にらみを利かせていると、不審な行動を取りやめることでしょう。
列車内に警備員が乗車することによって、列車内の安全を保ちやすくなります。
痴漢対応
痴漢といえば満員電車の車内で起きることが多いですが、場合によっては新幹線の車内で起きることもあり得ます。
下記は、2022年9月に北陸新幹線の車内で痴漢行為があったことを報じた記事です。
13日午後9時20分ごろ、富山駅に停車中の金沢発東京行きの北陸新幹線「かがやき518号」の女性客が「車内で痴漢行為を受けた」と駅員に申告した。列車はそのまま富山駅で停止して警察官らが対応に当たり、約50分後に運転を再開した。
(引用:北國新聞 2022年9月14日付)
痴漢行為は満員電車に限らず、比較的混雑していない車内でも起こりえます。警備中の列車内で痴漢行為を受けたと連絡を受けた場合は、車掌に連絡を取ったうえで、最寄りの駅に停車したときに駅員に引き渡します。
列車内での痴漢行為を防ぐためにも、警備中に痴漢行為の連絡を受けたら適正に対応することが重要となります。
不審物対応
警備員は列車内の不審物の対応もおこないます。場合によっては、列車内に得体の知れない固体や液体が置かれていることがあるためです。
しかも、不審物の中には人体にとって危険なものもあり、乗客が不用意に触れると気分が悪くなったり、身体を損傷したりすることもあり得ます。
不審物を発見したら乗客が近づかないように対策を取ったうえで、すぐに警察に連絡し、対応してもらうようにします。
車内に置いてある不審物を調べてみると、単に乗客の落とし物というケースもあります。しかし、場合によっては無差別テロを目的とした危険物というケースもあり、乗客に危害をおよぼすこともあり得ます。
警備中に不審物を発見したら、速やかな対応が求められます。
不審者対応
警備中の列車内で不審者を発見したら、乗客に危害がおよばないように、不審者に対して適切に対応します。
不審者は刃物などを所持している場合があり、不審者が暴れると乗客がケガをする可能性があります。
新幹線に乗車する警備員は、不審者から乗客を守るために、不審者が暴れた場合に動きを封じて、乗客に危害がおよばないようにするための訓練を受けます。
万が一、乗車中の車内で不審者が暴れ出した場合は、警備の訓練で学び、身につけたことを活かしながら、列車内の安全を守ります。
新幹線で警備員が増えたきっかけの事件について
新幹線で警備員が増えたきっかけの事件としては、2018年6月に発生した東海道新幹線の殺傷事件があげられます。
この事件について、神奈川新聞(2018年6月12日付)は下記のように報じました。
新横浜-小田原間を走行中の東海道新幹線「のぞみ265号」(東京発新大阪行き、16両編成)の12号車で9日夜、男が乗客をなたなどで切りつけ、男女3人が死傷した事件で、県警は11日、殺人未遂容疑で現行犯逮捕していた愛知県岡崎市、無職小島一朗容疑者(22)を殺人容疑で送検した。
殺害されたのは兵庫県尼崎市の男性会社員(38)と判明。同容疑者は調べに対し「むしゃくしゃしてやった。誰でもよかった」と供述。県警は乗客を無差別に襲ったとみて、捜査を進めている。
(引用:神奈川新聞 2018年6月12日付)
日常的に利用する機会が多い電車や新幹線の車内は、運行中は密室のような状態となるため、なんらかの事件が発生してしまうと、速やかに逃げることが難しくなってしまいます。
特に、大勢の乗客が乗っている電車内では、逃げられるスペースも限られるため、加害者が武器を所持していたなら、けが人だけでなく死者が出てしまうこともあり得るでしょう。
新幹線は航空機とは異なり、保安検査がないため、武器になり得るものを電車や新幹線の中に持ち込むことができます。
もし、新幹線でも保安検査をおこなえば、車内で事件が起きる確率は抑えられるでしょう。
しかし、新幹線の定員は航空機よりも多いこと、さらに運行本数も多いため、すべての乗客の保安検査をおこなうと時間がかかるだけでなく、新幹線の遅れにもつながってしまいます。
現状では、新幹線の車内の警備は、警備員が乗車し車内を巡回することがもっとも効果的といえます。
新幹線車内の警備は「見せる防犯」
東海道新幹線を運行するJR東海は「見せる防犯」をキーワードとして、新幹線車内の警備強化に取り組んでいます。
東京新聞の記事(2019年6月13日付)では、東海道新幹線の全列車に警備員が乗車していることを報じました。
五月三十日、JR東海の定例会見で、金子慎社長は車内を巡回する警備員を「ある種の抑止力」と説明。その上で五月末までに全列車で同乗が実現したと強調した。今は途中区間だけの列車もあり、今後は東京-新大阪の全区間に同乗させる態勢をつくり「見せる防犯」を強めていくとした。
(引用:東京新聞 2019年6月13日付)
新幹線の車内を警備員が定期的に巡回していると、不審者が危険をともなう行動を起こそうとしていても、そのような行動はためらってしまうことでしょう。
つまり、警備員の存在は事件・事故防止の抑止力となるため、車内が安全な状態に保たれやすくなり、利用者は安心して新幹線に乗車できます。
まとめ
列車に乗車する鉄道警備員は、列車内の安全確保を目的として警備をおこなっています。
具体的な業務内容は、不審物や不審者の対応、痴漢行為をした人の対応などがあります。
列車の運行中は列車の外に出ることができず、いわば密室のような状態となります。そのため、列車内で危険をともなうトラブルが発生してしまうと、乗客の多くは逃げ場所を失ってしまい、けが人が出る事態にもなりかねません。
そのような状況を防ぐため、鉄道警備員は列車の利用者が安全でいられるように、定期的に列車内を巡回しながら事件や事故の防止に努めています。
(画像は写真ACより)
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