ATMの点検・保守や現金回収及び運搬の業務は、貴重品運搬警備業務と呼ばれています。今回は、この貴重品運搬業務の一部、ATMの保守業務について詳細に解説します。
ATMの保守業務とは?
以前は、銀行や郵便局の内にしかなかったATMも、今ではコンビニや駅の中など、街の中で当たり前のように見かけるようになりました。全国銀行協会の決済統計年報によると、2021年9月末の金融機関ATM・CD設置台数(ゆうちょ銀行、コンビニATM除く)は全国で9万台以上のATMが設置されています。このATMの保守や現金回収なども警備員が行ってたのはご存じでしたでしょうか?ATMの保守や現金回収及び運搬の業務は、貴重品運搬警備業務と呼ばれています。
警備業務には、施設内を巡回警備する第1号警備業務、道路上での交通誘導やコンサートなど大規模会場の導線の確保、会場内の案内を行う第2号警備業務、貴重品、現金、核燃料といった貴重品の搬入搬出輸送を行う第3号警備業務、要人警備として活躍する第4号警備業務に大別されます。
第3号警備業務は、貴重品運搬警備業務と核燃料物質等危険物運搬警備業務に分類され、ATMの保守業務は、第3号警備業務の中の貴重品運搬警備業務に含まれます。貴重品運搬警備業務は、警備業法第2条で以下のとおりに規定されています。
「運搬中の現金、貴金属、美術品等に係る盗難等の事故の発生を警戒し、防止する業務」
現金や有価証券、貴金属、美術品などの輸送の際に、盗難などの事件事故を防止するのが役割となっています。
警備業法第2条
https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=347AC0000000117
ATMの保守・点検業務の主な業務は、ATM内の現金の補充と回収。ATMの故障対応。ATM故障時におけるお客さまの対応などがあります。警察庁生活安全局は、貴重品運搬警備業務を行っている警備会社は全国の4.1%と調査結果を示しています。第1号警備業務の66.6%、第2号警備業務の75.8%と比較するとその割合は、かなり少なくなっています。これは、ATMやコインパーキングなどの保守点検業務は、全国各地広い地域での対応が必要となる。保守管理には、運営ノウハウの蓄積が必要なため、ATMの保守業務を取り扱う会社があまり多くないと考えられます。
保守業務の内容とは?
ATMの保守業務を、それぞれ詳細に説明します。
・警備輸送業務
駅舎の中やコンビニエンスストアなどに設置されているATMには、預金の引き出しや預金ができるように、常に一定金額の現金が収納されています。また、預け入れられた現金は当然にATMに収納されています。1台のATMに収納できる現金の枚数には限りがあります。収納できる枚数に過不足が生じると、そのATMは預け入れができない。もしくは引き出しができない事態が発生します。そのため、定期的に警備員が、銀行の指示のもと、ATMの現金の回収と補充を行う必要があります。この回収や補充を行う業務を警備輸送業務といいます。
・資金管理業務
銀行業務を行う上で、帳簿上のデータ上の金額と実際の金額は1円として違いが出てはなりません。これはATMでの入出金でも同様です。ATMへ補充した現金、またATMから回収を行った現金が、各金融機関のデータと完全に一致しているか常に確認を行う必要があります。また、補充にともない、持ち出している現金が現在いくらあるのか?どれくらいの現金が1日に必要なのか?といった情報を各金融機関の事務センターへ定期的に行う必要があります。万が一の事態に備え、常に安定した現金量を確保する必要があります。このように、資金の管理業務もATMの保守業務に含まれます。
・障害対応業務
ATMが故障した場合の対応も警備員の保守業務の仕事となります。通常、設置しているATMにはインターフォンがついています。ATMの利用途中に、機械の故障で現金が引き出せなくなった場合や紙幣が機械に詰まってしまった場合など、ATMに設置したインターフォンから、利用者から、故障受付の問い合わせが故障受付のコールセンターに入ります。
コールセンターは故障や障害の問い合わせを受けると故障や障害の内容を確認の上、警備会社へ該当ATMへの出動要請を行います。コールセンターからの連絡を受け、待機していた警備員は故障したATMへ向かい機械の補修と現金の返却などを行います。このように、ATMの保守を行う警備員は常に現金の輸送を行う場合があります。
現金輸送の4原則
現金の輸送を行う警備員には以下4つの原則が定められています。
・止めてはいけない
輸送中に運搬車を止めようとする人や不審な人物に出くわしても決して応じてはいけません。たとえ、警察官の姿をした人から呼び止められても管理者へ連絡の上、確証がない限りは止まってはなりません。警察官の偽装をした窃盗犯の可能性もあるからです。
・のせてはいけない
たとえ、知人や警察官であっても対象物を運んでいる輸送車にのせてはいけません。これは、運搬する現金や貴重品をまもると同時に警備員自身をまもるために大切です。
・はなれてはいけない
搬入・搬出、運搬業務をおこなっているときに、決して輸送車や警護の対象物から離れてはいけません。強盗グループは常に目を光らせています。一つの油断が大きな事件につながります。
・開けてはいけない
輸送時に運搬車両の窓を決して開けてはいけません。もし、窓を開けてしまうと、窓から強盗の襲撃を受け、催涙弾などを社内へ投下されてしまうリスクがあるからです。これら4原則は、現金を安全に輸送するために必要な決まりと同時に、警備員自身の安全を守るためにも大切な決まりです。
ATM保守運用業務で働くために資格は必要か?
ATM保守業務にあたり、必須となる資格はありませんが、持っていると採用時に有利な資格があります。その資格とは、貴重品運搬警備業務検定となります。この資格は国家資格になっており、1級と2級にわかれています。資格取得を通じて、貴重品や危険物を安全に輸送を行う上で事故や盗難などを防止する能力を兼ね備えていると証明されます。
この資格を取得するためには、2通りの手段があります。国家公安委員会が直接行う検定に合格する方法と国家公安委員会の認定を受けた警備員特別講習事業センターが行う特別講習を受講した後に、修了試験を受けるパターンとなります。試験の合格率は、特別講習を受験する方が直接受験より高くなる傾向にあります。
「貴重品運搬警備業務」は1級と2級の資格にわかれています。2級は受験要件はありませんが、1級は2級取得後1年以上の実務経験が必要となっています。まずは、2級を受験し業務経験をつみつつ、1級を目指すケースが多くなっています。
もし、1級を合格すると、貴重品輸送現場のリーダーの役割を担当し、輸送警備計画の作成に参加するなど、貴重品を安全に目的地まで輸送する能力を持った人材として警備業界で重宝されます。また、1級を取得すると管理職への登用のチャンスも高くなり、月収、年収のアップも期待できます。
ATM保守業務は、取り扱っている警備会社が全体の4.1%と少ないですが、比較的大手の警備会社にて継続的に求人募集を行っています。勤務地も全国各地で募集を行っています。お住まいの地域でも見つかる可能性は高いです。まずは、求人サイトで調べてみることをおすすめします。
まとめ
ATMの保守業務は、警護の対象が現金となります。他の警備業務以上に現金といった貴重品を取り扱う責任感と障害対応時に柔軟なお客様対応が求められます。ATMの保守業務に関する求人も継続的に行われています。興味のある方は、積極的に挑戦してみてください。
コメント