警察官と警備員は、共に私たちの安全と安心を維持するために働いています。しかし、警備員と警察官の間では、出来ないことやできること、仕事の範囲が大きく異なっています。今回は、警察官と警備員の違いについて、法律上の違いから服装や警察官が出来て、警備員ができないことなど詳細に解説します。
警察官と警備員の違いについて
まずは、警備員について説明します。まず、警備員は、民間企業の社員となります。警備業法は、警備業者および警備員を以下のとおり定めています。
第二条 この法律において「警備業務」とは、次の各号のいずれかに該当する業務であって、他人の需要に応じて行うものをいう。
一 事務所、住宅、興行場、駐車場、遊園地等(以下「警備業務対象施設」という。)における盗難等の事故の発生を警戒し、防止する業務
二 人若しくは車両の雑踏する場所又はこれらの通行に危険のある場所における負傷等の事故の発生を警戒し、防止する業務
三 運搬中の現金、貴金属、美術品等に係る盗難等の事故の発生を警戒し、防止する業務
四 人の身体に対する危害の発生を、その身辺において警戒し、防止する業務
2 この法律において「警備業」とは、警備業務を行う営業をいう。
3 この法律において「警備業者」とは、第四条の認定を受けて警備業を営む者をいう。
4 この法律において「警備員」とは、警備業者の使用人その他の従業者で警備業務に従事するものをいう。
引用 警備業法 総則 定義 https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=347AC0000000117
警備員は、商業施設、学校、駐車場、工事現場などさまざまな場所で警護をおこなう仕事を指します。警護をおこなうことは危険から守るというだけでなく、商業施設や大規模会場における会場内の案内、忘れ物の管理、ATMの保守点検、工事現場の交通誘導など多くの業務に分かれています。
警備中は、事件や事故などが発生しないように常に周りへ注意を払いつつ業務を行わなければなりません。また、館内案内や保守点検を行うなど、お客様に対するサービスマインドや機械に対する知識も求められる業務なのです。自身の勤務時間中に事件、事故の発生がなく、無事に次の担当へ引き継ぐことができれば非常にやりがいのある仕事だといえます。
一般的に警備員になるためには警備会社へ就職する必要があります。なぜなら、警備会社が企業や団体、ホームセキュリティの場合は個人などから警護の依頼を受けて自社の警備員を警護にあたらせるからです。警備員は、警備業法で厳格になることができない人を定めていますので、個人で勝手に警備業務を行うことは原則できません。
警備中に、事件や事故が発生した場合には、警備員は犯人や不審者を取り押さえられます。ただし、逮捕することはできません。逮捕権は警察官にのみ認められているからです。そのため、取り押さえた後は、すぐに警察へ連絡の上、犯人や不審者を引き渡す必要があります。
続いて、警察官について説明します。警察官は、民間企業の社員ではありません。国や地方自治体に勤める公務員となります。
警察官については、以下の通り法律で定められています。
(警察の責務)
第二条 警察は、個人の生命、身体及び財産の保護に任じ、犯罪の予防、鎮圧及び捜査、被疑者の逮捕、交通の取り締まりその他公共の安全と秩序の維持に当たることをもってその責務とする。
2 警察の活動は、厳格に前項の責務の範囲に限られるべきものであって、その責務の遂行に当つては、不偏不党且つ公平中正を旨とし、いやしくも日本国憲法の保障する個人の権利及び自由の干渉にわたる等その権限を濫用することがあってはならない。
警察法 第一章総則より引用 https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=329AC0000000162
警察官は、あくまで公務員である点が、民間企業の社員である警備員と大きく異なる点です。警察官は公務員のため、警察官になるためには、公務員試験に合格する必要があります。また、公務員は、原則副業は認められていません。つまり、警備員と警察官を兼務することは不可能です。
また、警察官と警備員の大きな違いとして、逮捕する権限が警察官には認められている点です。これは、警察官職務執行法により定められています。また、逮捕以外にも取り調べや捜査、拳銃などの武器の使用、交通整理など一般人への協力命令などさまざまな権限が警察官には認められています。
まとめますと、以下の権限が与えられています。
・職務質問をする権限(警察官職務執行法第2条第1項)
・武器を使用する権限(警察官職務執行法第7条)
・被疑者への出頭要請及び取り調べ権(刑事訴訟法第198条)
・逮捕権(刑事訴訟法第199条)
・犯罪捜査のための捜索・差し押さえ・検証(刑事訴訟法第218条)等
・緊急自動車の優先通行権(道路交通法第39条等)
・特定区域への通行制限権(道路交通法第6条第4項)
・災害時の通行禁止区域における車両その他の物件の移動命令や破損の権限(災害対策基本法第76条の3)
・現場における一般人に対する協力命令権(警察官職務執行法第4条第1項)
・他人の家屋、土地に立ち入る権限(警察官職務執行法第6条第1項)
警察官と警備員の服装の違い
続いて、警備員と警察官の服装の違いについて説明します。警察官と警備員の服装はよく似ています。警察官の服装は当然全国で同様の制服になってます。警備員の服装は警備会社で、ことなります。しかし、警備員の服装もよく似ているケースが多いです。それぞれ法律で服装についてどのように定められているのでしょうか?まず警備員です。
(服装)
第十六条 警備業者及び警備員は、警備業務を行うにあたっては、内閣府令で定める公務員の法令に基づいて定められた制服と、色、型式又は標章により、明確に識別することができる服装を用いなければならない。(警備業法 総則より引用 https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=347AC0000000117)
明確な色などは定められていませんが、一般的に警察官と似た服装としている警備会社が多くなっている理由は、犯罪の発生の防止です。警察官と服装を似せることで犯罪の心理的な抑制に繋がります。また、地震、火災などの天災・事故が発生した場合にも制服がわかりやすいことで人々の誘導が行いやすくなります。
ただし、警察官と全く同じ服装を着用することは、許さされてはおらず国家公安委員会の許可を得たものを着用する義務があります。警察官の服装は、「国家公安委員会規則」によって以下の通り定められています。
警察官は、勤務中は、制服、制帽、制服用ワイシャツ、ネクタイ、ベルト及び靴を着用し、並びに帯革、手錠並びに階級章及び識別章(長官にあっては警察庁長官章、警視総監にあっては階級章)を着装しなければならない。
(引用 国家公安委員会規則 警察官の服制に関する規則
・夏服の上着は水色・ズボンは藍色にする
・冬服の上着とズボンは、濃紺色とする
・エンブレムは、右袖の上腕部につける
主にこれらの規定が定められています。警察官、警備員の服装の間は、意図してにせるようにした点もあるので、一目で見分けることが難しいと思う方が多いと思います。警備員と警察官の見た目の異なりは、エンブレムがはられている場所を覚えると一目で見分けられます。警備員と警察官の違いをまとめると以下となります。
・警備員は民間の社員、警察官は公務員
・警察官のみ逮捕する権利、捜査する権利がある
・警察官の服装は、警察業法にて、規定されてるが、警備会社の服装は、それぞれ所属の会社で決まっている。
携行可能な装備も異なります。警察官は、拳銃を持ち歩くことが許可されています。一方、警備員には当然ながら拳銃の所持はできません。ただし、警備員も自衛のため警棒を所持することはあります。
警察官にできて、警備員にできないこと
警察官と警備員の違いを見てきました。改めて、警察官にできて警備員にできないことをまとめてみたいと思います。警察官は、国家公務員であり、事件や事故が発生した場合の逮捕権、捜査権、取り調べ権、銃器の使用ができます。一方、警備員にはこれらの権限は付与されていません。
一例をあげると、交通誘導と交通整理の違いとなります。警察官が行う交通整理は、通行の混雑が予想される箇所で警察官が車両の誘導を行いますが、それは命令となります。すなわち、警察官の指示に違反すると命令違反として逮捕される場合があります。
警察官の誘導は、あくまで命令となります。一方、警備員が行う車両や通行人の誘導は、交通誘導であり、法律上の強制力はありません。通行する人や車両にはあくまで協力を依頼する立場での業務の遂行となります。
また、警備員は遺失物の管理もできません。警備対象施設内での落とし物については、いったんとりまとめは行いますが最終警察署へ持参し、引き渡しを行います。また、事件や事故が発生しても、その原因や犯人を捜したり、捕まえたりすることはできません。あくまで、現場において取り押さえるのみです。その後は警察官へ速やかに引き渡しを行う必要があります。
まとめ
このように、警察官と警備員はいずれも人々の治安を維持する仕事であることは同じですが、服装、仕事を進めるやり方がかなり違いがあります。警察官は採用試験へ合格必須となります。警備員にはそのような採用に当たって、資格はありません。社会的な貢献を行ってみたい方はぜひ警備員に挑戦することをおすすめします。
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