警備業務検定は、警備のプロを育成することを目的としておこわれており、施設警備や交通誘導警備、雑踏警備など、それぞれの警備で検定が実施されています。
また、それぞれの警備検定は1級と2級があり、1級の検定ではより専門的な知識や能力が問われます。
雑踏警備業務検定1級を取得するとどんな業務をおこなうことができ、どんなメリットが得られるのか、試験はどんな内容でおこなわれるのか、という点を中心に説明します。
雑踏警備業務検定1級とは
雑踏警備業務検定とは、雑踏警備に関する知識や能力を問う試験です。
なお、雑踏警備とは、イベントやお祭りなどの会場に不特定多数の人々が集まった場合、大混雑による事故を防ぐためにおこなう警備を指します。
雑踏警備がおこなわれることにより、混雑している場所では人々の流れが整然となるため、群衆雪崩などの事故を防ぎやすくなります。
雑踏警備業務検定は1級と2級の試験があります。2級は雑踏警備に関する基礎的な内容が問われるのに対し、1級は専門的な内容や応用力が問われます。
具体的には、一定の場所に大多数の人々が集まった場合の雑踏整理の方法や、不測の事態が発生した場合の対応方法などです。
雑踏警備業務検定1級を取得することにより、雑踏警備に関する専門的な知識が得られるため、雑踏警備の現場において警備の責任者の役割を担うことがあります。
雑踏警備業務検定1級ができること
雑踏警備業務検定1級を取得した人ができることは、雑踏警備業務の管理と、雑踏警備における専門的な業務です。
雑踏警備業務の管理は、1級の取得者だけができる業務であり、2級の取得者はおこなうことができません。
雑踏警備業務の管理でおこなう業務としては、警備計画書や警備指令書の作成があります。
また、雑踏警備に関する業務は、2級は基本的な業務をおこなうのに対し、1級は専門的な業務をおこないます。
雑踏警備における専門的な業務としては、下記があげられます。
・群衆の誘導、群衆による圧力の緩和
・雑踏において多数の死傷者が出た場合の救護方法
・護身術、警戒棒の操作(応用的な内容)
雑踏警備業務検定1級を取得するメリットは、雑踏警備に関する専門的な知識や能力を活かし、多くの人々で混み合っている現場において危険な状況になることを防げる点です。
さらに、死傷者が出るなどの事故が発生した場合、すみやかに対応できるため、被害を最小限に食い止められます。
雑踏警備業務検定1級を取得するには
雑踏警備業務検定1級の取得者になるには、下記の2つの方法があります。
・公安委員会が実施する検定を受検する
・各都道府県の警備業協会、または警備員特別講習事業センターが実施する講習を受講
※講習が終わった後に修了試験を実施
公安委員会が実施する検定を受検するためには、試験の内容を自分で学ぶ必要があります。
独学も可能ではありますが、不明点があった場合に理解が進まなくなるうえに、学ぶためのモチベーションが上がりにくくなってしまい、学習の効率が下がりやすくなってしまいます。
その点、各都道府県の警備業協会などが実施する講習を受ければ、雑踏警備の内容が理解しやすくなります。さらに、講習が終わった後に修了試験を受けられるので、公安委員会が実施する検定よりも合格しやすいといえます。
ただし、雑踏警備業務検定1級を受験するためには、雑踏業務検定2級に合格し、合格後に1年以上雑踏警備業務に従事していることが条件です。
そのため、雑踏警備業務検定の1級を取得するためには、警備会社に入社して雑踏警備業務をおこない、雑踏警備業務検定2級に合格した後、1年以上雑踏警備業務をおこなう必要があります。
雑踏警備業務検定1級試験について
雑踏警備業務検定1級の試験は、どんな人が受験資格を得られるのか、また、試験はどのような内容でおこなわれるのか、という点について説明します。
そのほか、試験の合格率のデータも紹介するので、受験する前の参考にしてください。
受験資格
受験資格は、雑踏警備業務検定2級に合格し、雑踏警備業務に1年以上従事していることが条件です。
なお、雑踏警備業務検定2級の受験資格は特に設けられていません。雑踏警備業務検定1級の資格を得るためには、警備会社に入社し、雑踏警備の基本を理解するところから始まります。
そのほか、都道府県の公安委員会が、雑踏警備業務検定2級と雑踏警備業務に1年以上従事している人と同等の知識や能力を持っていると判断した人も受験資格の対象となります。
試験内容
試験内容は、学科試験と実技試験の2種類です。それぞれの試験内容について説明します。
学科試験
学科試験は20問で五肢択一式です。試験時間は60分、90点以上で合格となります。
学科試験の内容は下記のとおりです。
・警備業務に関する基本的な事項
・法令に関すること
・雑踏の整理に関すること
・雑踏警備業務の管理に関すること
・人の雑踏する場所における負傷等の事故が発生した場合における応急の措置に関すること(出典:警視庁 雑踏警備業務検定(1級・2級)の学科試験及び実技試験の出題範囲及び配点基準)
学科試験に合格した人のみ実技試験を受けられます。学科試験に合格しなかった場合は実技試験を受験できません。
実技試験
雑踏警備業務検定では、1回の受験において複数の実技試験を実施します。
実技試験の内容は下記のとおりです。
・雑踏の整理に関すること
・雑踏警備業務の管理に関すること
・人の雑踏する場所における負傷等の事故が発生した場合における応急の措置に関すること(出典:警視庁 雑踏警備業務検定(1級・2級)の学科試験及び実技試験の出題範囲及び配点基準)
実技試験では、ひとつひとつの実技試験が終わりしだい、その都度得点を発表します。得点が90点以上だった場合に限り、次の実技試験を受験できます。
実技試験の得点が90点未満だった場合は不合格となり、次の実技試験は受験できません。実技試験に合格するためには、すべての実技試験で90点以上をとることが求められます。
合格率
雑踏警備業務検定1級の合格率については、一般社団法人 警備員特別講習事業センターのサイトを参照します。
それによると、2006年~2021年の合格率は69.4%でした。なお、2021年に限ると70.4%となりました。
このことから、雑踏警備業務検定1級の合格率は70%程度で推移していることがわかります。
出典:一般社団法人 警備員特別講習事業センター 合格率データ
http://www.csst.jp/05/05.html
雑踏警備業務検定1級の合格率は比較的高めであり、合格しやすいといえますが、合格するためには、講習の内容を十分に理解することが重要となります。講習の内容を理解したうえで試験に臨みましょう。
まとめ
雑踏警備業務検定1級は、雑踏警備に関する専門的な知識や能力が身についているかどうかを判定する試験です。
1級に合格すると、雑踏警備業務の管理がおこなえるほか、イベント会場など、多くの人々が集まっている現場において適切な誘導をおこなえるため、事故防止の効果が期待できます。
また、万が一、混雑した現場でトラブルが発生したとしても、適切に対応するため、被害を最小限に食い止められます。
雑踏警備業務検定1級の受験資格は、雑踏警備業務検定2級に合格し、その後、雑踏警備業務に1年以上従事した場合に与えられます。
大勢の人々が集まる場所でのトラブルを防ぐために、雑踏警備業務検定1級の資格は必須となります。
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