冬の寒いときも夏の暑いときも常に安全と安心を守る警備業。今回は真夏の暑い警備で気をつけないといけない熱中症について詳細に解説します。
はじめに
警備員の業務には、第1号警備業務から第4号警備業務まであります。その中で、真夏の屋外がメインで実施する警備は、大規模広場や花火大会など大規模な広場で通行の整理整頓や導線確保の仕事と工事現場や駐車場の入り口などで通行人やドライバーを誘導する仕事が熱中症のリスクが高くなります。警備員は、業務中、常に制服の着用を求められますので、体調に合わせての服装の調整が難しくなります。
それだけ、経口補水液、適切な休息等自己管理が求められます。実際、2021年に業種別死者数、ワースト第三位にはいるほど深刻な問題となっています。2021年において警備業の熱中症発症人数は65人となっています。これは、建設病、製造業、運送業商業に続いて,業種別でワースト3にはいることとなっています。また、死亡も1名でました。この死亡事例は、40歳代の警備していた人が建設現場道路上での通行の誘導を警備中に熱中症が発症され、そのまま死亡となりました。(参考 厚生労働省「2021年 熱中症による病気災害発生状況 https://www.mhlw.go.jp/content/11303000/000900477.pdf )
熱中症とは?
まず、熱射病と熱中症について説明をします。熱中症とは自身の体温が上がり、体の中の水の部分と塩の部分の調整がこわれ、自身の体温を適切に保つ能力が働かないことにより、体内の温度の向上やけいれん、めまい、頭痛などさまざまな身体的な症状を引き起こす病気のことをさします。その重さにより、Ⅰ度からⅢ度まであります。Ⅰ度は、脳までの血の流れが不十分で生じるめまい、発汗が伴う塩分不足出生じる筋肉の痛みや硬直からくるこむら返り、大量発汗を止まらなくなる状況をあらわします。Ⅱ度は頭痛や不快感、嘔吐や吐きたい気持ち、けんたい感、脱力感となっています。最終のⅢ度になると自己意識のトラブルやけいれん、手足の運動障害が発生し、体温もからだに触れると熱く感じるほどになります。熱中症と熱射病、日射病と同様の症状となってしまいます。
熱中症を取り巻く監督責任
労働者を取り巻く熱中症の環境は発生件数の増加や、発生時にはすでに深刻な症状となっている場合が多く、急速に社会に認知されるようになりました。また、業務中に熱中症を発症した場合には、労働災害として認定される可能性もあります。その場合には、十分な対策の有無の確認が事業者になされます。確認においてもし不備が発覚すれば、行政より厳しい監督・指導処分が下される可能性もあります。
2010年代中盤に厚生労働省は、熱中症の状況をかんがみて、建築業と部屋の外で行う警備業が熱中症の予防を行う対策の重点業種として取り組みをなされました。この熱中症予防対策をとらずに労働災害として熱中症が発症した場合には、事業者は安全配慮義務違反として法律上に罰せられるようになりました。このように、熱中症対策は警備員自身を守る視点だけでなく、警備会社自体を守る視点からも発生予防の対策が非常に重要であると位置づけられています。
熱中症になりやすい業務とは?
熱中症は、一般的なイメージとしては、炎天下に長時間いた場合や真夏の暑い中に運動を行っていた場合に発症することを想像するかもしれません。しかしながら、このような場合にのみ発症するだけではありません。梅雨時期、春先も突然気候の温度が上がった場合に自身がまだ暑さに適応できていないときも発症しやすい病気となっています。
具体的には、室外、室内の温度が高い、湿気が多い、風が強くない、日光の強さが厳しい、照り返しが高い、急激に体感温度が上がった場合、発症しやすいと言われています。実際、紫外線の強さは8月より5月の方が強いと言われていますので、夏場だけ注意を行えば問題ないことが明らかとなっています。また、気温が高くない日であっても湿度が高い場合体感温度が上昇してしまい、熱中症にかかりやすくなってしまいます。
警備業の業務においては、第二号警備業務である雑踏警備業務や交通誘導警備業務、屋外が中心の警備は当然のこととして、商業施設内や工場内の警備を行う第一号警備業務である施設警備業務においても熱中症は注意しなければならないものとなっています。
なぜ熱中症になりやすくなるのか?
警備業が熱中症にかかりやすくなってしまう理由は、多くの警備業において警備員は、警備現場の場所へ派遣される業務システムであるため、就業環境の状況管理や自身の体調管理が、現地へ派遣される警備員個人によることが大きくなってしまうからです。そのため、現場に派遣されている警備員の就業環境や体調が悪化してしまった場合でも派遣先の管理者への申し入れ、交代要員の申し入れが難しくなるケースが多くなってしまうことも熱中症の発症を高めてしまう大きな要因となります。
この状態をなおすためには、警備業者側から、積極的に派遣している警備員の就業環境リアルタイムの状況把握と状況管理に速やかに対応する体制を整えなければなりません。特に、警備業界は60歳以上の年齢構成が、約45%を超えており、シニア層が他の業界と比較して圧倒的に多い業界です。体力面でビハインドのある高齢者の就業環境のケアは警備業界における労務管理の大きな課題となります。実際、2013年に兵庫県尼崎市で発生した警備員の熱中症死亡事故においては、会社側の熱中症対策の不備を指摘し、尼崎労働基準監督署は、警備会社と同社会長を刑事事件として書類送検を行う事態となっています。
警備員ができる熱中症対策とは?
熱中症を予防するための対策はどのような方法があるのでしょうか?まずは、暑さを避けることが大切です。屋外での勤務の場合は日陰を通るようにする。帽子の着用を徹底する。屋内の警備においては、屋内施設のブラインドやカーテンを閉めて直射日光を避ける。扇風機やエアコンで室内の温度や湿度を常に最適に調整する。
服装においても、制服をできるだけ外からの熱の吸収を抑え、体内の熱をスムーズにのがすデザインに変更する。素材においても吸汗性や通気性の高い、綿素材や麻素材を利用する。また警備員地震もインナーの着用を忘れないようにし、肌とインナー、インナーとアウターの間に空気の層をつくるようにし、外からの熱気を遮断するように心がけます。
こまめな水分補給も大切です。業務中の水分補給は不謹慎という考えは時代遅れです。暑いときには気づかない間に体の水分は汗で失われています。喉が渇いたと感じる時点ですでに水分不足となっている可能性が高くなっています。水気と共にミネラル、ビタミンも失われてしまいますので、経口補水液の吸収と併せて、ビタミンミネラルの吸収もあわせてとる必要が大切です。
また、水分補給時にコーヒーや緑茶などのカフェインが多く含まれる飲み物は利尿作用が強いためとらないように気をつけなければなりません。最後に、警備員自身も日々のウォーキングやランニングなどで汗をかくことに体を慣らしておく必要があります。クーラーの効きすぎた部屋に居続けると体内の発汗作用が失われ、汗をかいて体温調節機能ができなくなってしまいます。
まとめ
警備員は、年中仕事を行い、業務によっては屋外でほとんどの時間を過ごします。制服の規定もあり警備員自身の努力では避けられない場合もあるため警備業界全体として対策を講じなければならない問題となっています。
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