警備員は社会保険の未加入率が高い?社会保険の概要や未加入問題について解説

雇用保険や労災保険、健康保険、名前を聞いた経験はあるけれどどのような仕組みか?今一つはっきり知らない方も多いと思います。そして、警備業界はその社会保険の未加入が問題となっているのです。今回は、警備業界の社会保険未加入率について詳細に説明します。

目次

社会保険について

まず、簡略説明します。労働者災害補償保険いわゆる労災保険、雇用保険、健康保険、厚生年金保険のことをいいます。労災保険以外は、基本、会社と労働者が半分ずつ保険料を負担する必要があります。少子高齢化の影響もあり、年々保険料率は上昇を続けています。また、従来警備業界はアルバイトや派遣社員など短期雇用が多く、労災保険以外の保険加入義務がありませんでした。

しかし、近年で、社会保険加入者の適用の範囲がひろがり、パートやアルバイトなどの短期雇用者も一定条件を満たせば、加入が義務付けられるようになりました。実際、業務に就いている方も入ることができるとご存じでない方はまだたくさんいる状況となっています。では、どのような条件を満たすことができれば社会保険に入ることができて、どのようなメリットがあるのか確認していきます。

社会保険料の負担は?

社会保険料の半分は会社が負担しなければなりません。警備会社は激しい価格競争の中で社員の社会保険の負担もできないほどでした。そのため、雇用主は利益を上げるために、従業員の保険への費用を削減していました。これは、国として大きな課題でした。国としても大きな問題として捉えており、国土交通省が管轄している建設業法においては、下請けの義務として建設業は加入義務の対象となっていましたが警備会社への明言はありませんでした。

すなわち、警備会社、警備員は社会保険に未加入であったとしても、建設業務の関連業務につく事は建設業法的には問題がないとされていたのです。しかしながら、建設業や建築業には常に工事に伴う危険が生じています。たとえ、建設業法的に問題がないとしたとしても、怪我をした場合に労災保険や健康保険に未加入であれば、通院費や治療費に莫大な金額がかかってしまいます。個人単位で、市町村が運営している国民健康保険に加入する事も可能ですが、こちらは全額個人負担のため負担が大きくなります。また、労災保険に変わる業務上の怪我や疾病に対する保険はありません。

社会保険の加入義務について

それでは、どのような方が社会保険の加入対象となるのでしょうか?社会保険の加入対象は、1週間に30時間以上働いている人を対象となります。また、2016年10月からは、従業員が501人以上の会社においては、1週間に20時間以上働いている方も社会保険の加入対象となりました。そして、2017年4月からは従業員が500人未満の会社でも、労働者と使用者の間で合意があれば社会保険に入ることができるようになっています。

雇用保険や労災保険、健康保険の管轄は厚生労働省となっています。厚生労働省が公表している加入条件は、1週間あたりの決まった労働時間が20時間以上であること、一カ月当たりの決まった賃金が88000円以上であること、雇用期間の見込みが1年以上であること、学生ではないことと定められています。健康保険法、雇用保険法、厚生年金法などで入らなければならないの義務が定められています。労務や総務担当が社会保険の加入の手続きを行っているはずです。もし不明であれば一度確認してみることをおすすめします。

警備員の社会保険への加入率はどれくらい?

警備員のどれくらい割合が社会保険へ加入されているのか?国土交通省の2018年、公共事業労務費調査によると、検定資格を持たない交通誘導警備員の社会保険への加入率は58%となっていました。一方、検定資格に合格している警備員の社会保険加入率は86%となっており、全職種の平均が87%であることを考えるとほぼ同等の数値となっていました。検定資格をもっていない警備員は全ての職種中で最低の加入率となっていました。(参考 社会保険の加入に関する下請け指導ガイドライン https://www.mlit.go.jp/ )

この調査の対象は、国土交通省が行っている公共工事を行っている時に警備を行っている警備員を対象としています。その対象者で未加入の割合が4割を超えるということは他の警備業務であればより未加入の割合が高い可能性があります。なぜなら、公共工事は国が工事を発注し、その工事代金を決めているからです。

そしてその単価は社会保険の加入促進を考慮に入れた設定であるに関わらず、未加入が多いということは警備会社の雇用主にアルバイトやパートなど短期雇用の警備員に対する社会保険の適用の意識が低いか、適用となった事実がまだ浸透されていないいずれかの理由によります。いずれにしても、社会保険の未加入は行政指導の対象となり、悪質な場合には刑事責任にも問われる問題となりますので、警備会社の雇用主は早急に問題を解決しなければなりません。

社会保険に加入するとどのようなメリットがあるのか?

年々、上昇を続ける社会保険料のため、加入者にとってメリットはあるのかと思われる方も多いかもしれません。だが、社会保険は、加入した利点がたくさんあげられます。まず、屋外で稼働する場合がたくさんあり、天気や環境の変化によって、体調が崩されてしまうケースが想定されます。

また、建設現場や道路工事の現場など常に事故が起きる可能性があります。場合によっては誘導している車にひかれてしまうケースも想定されます。業務中の現場で資材の落下により怪我や、業務外でも風邪やインフルエンザなどの病気にかかってしまった場合、社会保険に入っていれば原則3割の負担で医療を受けることができます。逆にいうと、健康保険にはいっていないと、三倍以上の医療費の支払いをしなければならなくなります。

また、病気やけがをしてしまい入院しなければならなくなってしまった場合、業務上の問題であれば、労災保険から、業務外の病気やけがの場合は健康保険から傷病手当金などの所得保障を受けることができます。これは、市町村が運営している国民健康保険では受けることができません。支給額は、それまで受けていた月額のおおよそ3分の2、支給期間も最大1年6ヶ月分受給できます。生活の保障がある点は大きなメリットがあります。保険対象も警備員の方本人だけでなく、家族までカバーできますので、配偶者や子供のいる方も社会保険に加入しておくことは大切です。

年金額にも違いが

国民年金に加えて、厚生年金も含まれます。社会保険に加入を続けていることで、将来受け取る事ができる厚生年金の額も多くなってきます。国民年金は、支給される金額は年間約60万円前後となっています。厚生年金に加入するとことで、支給金額を増やすことができます。また、厚生年金の負担は半額が雇用主となりますので、自身で全額支払う国民年金保険料よりトータルの負担は減ることとなります。

また、万が一、障害が残るような状態になってしまった場合にも、3分の2以上の期間支払いを行っていれば、障害年金の支給を受けることができます。また万が一保険者が死亡した場合にも遺族へ遺族厚生年金が支給されるため、死亡保険としての役割も果たしてくれるのです。

まとめ

警備業界に限らず、社会保険の未加入問題は今後ますます増加する可能性があります。それは加入対象企業が年々増加しているからです。警備会社でも新しい国の制度が理解できていない場合もありますので、ご自身をまもるためにも一度勤務先へ確認してみることをおすすめします。

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