警備員の階級制度
警備業は一般の企業とは一線を画す仕事ですが、会社であることに変わりはありません。警備する側と警備される側で警備契約を締結して業務にあたりますが、代表者が契約した内容を各警備員に報告し、不都合があれば全員に連絡事項を伝達して徹底した業務を行う必要があります。
そこで必要になるのが、それぞれの能力に見合う階級を与えて序列つける階級制度です。これらは、軍隊や警察のように階級をつけた組織にすることで連絡事項などがスムースに伝わるようにする効果があります。この記事では警備員の階級について具体的に解説いたします。
警備員の階級とは?
前述のように警備業の階級制度とは、あくまで業務をしやすく責任の所在を明確にするために作られるものであり、法律などで強制されるものではありません。
会社によっては階級制度も採用しないこともあり、全員が同じ立場で業務にあたるという企業も存在します。階級制度があったとしても、階級の名称や与えられた権限および責任なども異なり、階級による報酬なども同じではないことも覚えておきましょう。
一般的なところでは、最も下の階級から「警備士」、次が「上級警備士」、続いて「警備長」、さらには「上級警備長」などの階級が用意されています。また、作業にあたる職員を指導する者には、「警備司令補」や「警備指令」、「警備指令長」と上層部の階級を設けることも少なくありません。
指導者は国家資格が必要な場合もあるため、年齢や経験に関わらず資格の有無で決まることも多くあります。一般的には経験を積んだ熟練の警備員に資格取得を斡旋して、歪みのない階級で組織をつくることが理想とされています。
階級アップのメリット
階級アップのメリットは「昇給」と「キャリアアップ」の2つです。社員のためになるとともに、会社の財産にもなるため、階級制度は警備業にも広く浸透しています。
メリット①:昇給
警備は複数のチームで業務にあたることも多いため、チーム同士の連携をはかって必要なことは上申しなければいけません。そういった意味でも警備業に階級制度があると有効なことが多いため、警備会社のトップは社員に階級を与えて上下関係をつけるのです。
階級に差がつけば必然的に給料も変わります。責任を任されるものには高い報酬を払い、最も単純で重労働といえる下位階級の仕事は給料も少なくなるのです。その差額は会社によって異なりますが、最も低い階級の警備員と「警備業資格1級」の合格者では、年収で100万円もの差がつくこともあります。
資格を取得することによって階級がアップすることもあるので、ぜひ若いうちに難しい試験をクリアしてしまいましょう。
メリット②:キャリアアップにつながる
階級によって賃金が異なれば、多くの警備員は早く高い階級にあがるように努力します。階級が上がるとともに昇給する制度をつくることで、働く者たちはモチベーションが上がり、より質の高い警備ができることになります。
また、積極的に資格を取得しようと勉強することでキャリアアップにつながり、ひいては会社の利益になり個人の利益にもなるのです。
なぜ会社にメリットがあるかというと、単に一生懸命働いてくれるからということではありません。会社が大きな仕事をとれる可能性が増えるからです。例えば道路工事は年中行われていますが、大規模な工事になれば1年かかることもあり、会社にとって大きな収益が確保できます。
ここで問題なのが、道路工事の警備をするにあたって、現場には「警備業検定1級」の資格者が最低でも一人は必要になります。つまり、自治体から仕事を受注する段階で、有資格者がいなければ仕事を請け負う候補にもなれないということです。
また、「警備業検定1級」の資格の資格を持っていると、初期教育や現任教育を行うことができます。(※2級合格者でも合格したあとに1年以上の経験があり公安委員が適切だと判断すれば現任教育の講師になれます)
現職の警備員は年度のうちの10時間の教育が法律で義務付けられており、地域によって異なりますが、数ヶ月に1度くらいの頻度で現任教育が行われています。自社で資格を持っている人がいたなら、数ヶ月に1度決められた場所に赴いて講習を受けずとも、自社内で講習ができます。
こうしたメリットがあることを会社の上層部も知っているため、継続して有資格者を確保しようと考えているのです。
階級アップの仕組み
会社によって階級アップの基準は異なりますが、一般的な企業と同じで個人の経験の長さや仕事ぶりを査定することでランクアップを決定することが多くなります。ただし、警備業務は少人数のグループで動く場合も多く、指導者が全員の働きぶりを見て査定することは不可能です。
よって、ここでも階級制度によりグループのリーダーになったものが、グループ内の警備員を査定して、より上の階級の人に報告します。さらに、リーダーから選んだ警備員をランクアップしてもらうように働きかけて、上司の許可が下りれば晴れて昇進できるということになります。
また、経験だけを重視してしまうと、とくに努力しなくてもいずれは昇進できると安易に考える人も多いため、昨今では経験よりも作業への取り組み方や、資格取得を重用するようになっています。つまり、経験が無くても早く資格を取得すれば階級アップも早くなるのです。
言うのは簡単ですが、警備業に関わる資格も簡単ではありません。指導者になるためには国家資格である「警備業務検定1級」や「指導教育者」が必要で、筆記試験や実技試験で合格する必要があります。
ただし、前述したように、一度資格を取得してしまえば警備業では退職するまで重宝されます。お金と時間はかかりますが、警備業で生計を立てようと思うなら早く資格を取得して給料も大幅にアップしてもらいましょう。
まずはグループリーダーになろう
一足飛びに高い階級につくことは基本的にはないため、最も下位の階級であるグループリーダーを目指しましょう。会社にもよりますが、グループリーダーのことを「隊長」とか「班長」と呼び、アルバイトや新人の面倒を見る役割をします。
リーダーを目指すのであれば、次のリーダーになる存在を見つけてください。アルバイトや若い新人の中でもリーダーシップをとる人が必ずいます。そういう人物を見つけておき、シフトなどの大事な連絡をあなたから伝えるようにしましょう。
これが常態化すれば、あなたに連絡をすることで、アルバイトや一般の警備員全員に連絡が行き渡るようになります。上司はあなたに連絡するだけで細かい作業を省略でき、あなたの信用は上がります。
これらは一般の仕事と共通するものですが、ぜひ実践することをおすすめします。できれば、次のリーダー格の人は1人ではなく、2・3人にすると良いでしょう。
人数が多ければ複数の集まりができますし、アルバイト仲間と社員ではグループも異なることが多く、それぞれのリーダー格を見つけて連絡をとるようにします。
また、信用を得ることも大事ですが、先述のように資格の取得は階級アップに非常に有効です。指揮系統が上手くいく連絡網を自らリーダーになって作るとともに、資格も取得すれば鬼に金棒です。
まずは、グループのリーダーである「隊長」になり、その後も困らないためにも、次のリーダーたる人物を見つけておきましょう。
資格取得は「警備検定2級」から
目指すのは「警備検定1級」ですが、いきなり1級を受験することはできません。1級の受験資格として、「警備検定2級を取得後に1年以上実務経験があるもの」と定められているため、まずは2級を早く合格することが大事です。
早く合格するには、資格を持っている人から勉強の方法を聞くことが最も速い方法になります。警備検定では、学科の他に実技試験もあります。実技試験ではどんな事をするのか知っていないと本番では素早く対応ができません。合格者は実技の訓練を何度も繰り返して練習して合格したはずです。
警備検定ということを良く知るためにも有資格者に相談し、まずは警備検定2級を取得しましょう。
キャリア不足でも資格があれば階級はアップする!
警備業に階級制度は必ずあるものではありませんが、階級がある警備会社であれば早く階級が上がって給料も大幅にアップしてもらいたいものです。警備業の平均年齢は高く、長期にわたって従事している人も多くいます。
その人たちの経験を抜くことは至難の業ですから、早くランクアップしたいと考えるのならば資格取得が近道です。とくに高齢の方々は、「いまさら勉強なんて」と考える人が多いため、若い人にも大いにチャンスはあります。
熟練の方々から警備業を学ぶとともに資格取得を目指しましょう。
(画像は写真ACより)
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