道路上や駐車場の出入り口で、事故や渋滞が起きないように人や車の誘導を行う業務を「交通誘導警備」といいます。今回は、交通誘導警備を詳しく説明します。
交通誘導警備とは?
交通誘導警備は、4つの警備業務がある中、第2号警備業務に大別されます。第1号警備業務は、主に施設内を警備する施設警備業務、第3号警備業務は、貴重品や現金の輸送を行う業務、第4号警備業務は要人警護にあたるいわゆるボディーガードとしての業務となります。
警視庁生活安全局の調査結果によると、2021年度全国に約1万社ある警備会社の中で、73.6%の警備会社でこの交通誘導警備業務を取り扱っています。この割合は、第1号警備業務から第4号警備業務の中で一番割合が高くなっています。
この割合の高さは、建設業法と呼ばれる法律において、警備員は道路工事や建設工事の現場に必ず置かなければならないと定められていることが要因です。道路だけでなく建物の建設など必ず警備員が必要となっているからです。それほど、交通誘導警備業務は、社会全体から求められている業務です。
第2号警備業務は、「交通誘導警備」と「雑踏警備業務」にわけられます。交通誘導警備業務は、警備業法では、以下のとおり定められています。
警備業法2条1項2号「人・車両の雑踏する場所又はこれらの通行に危険のある場所における負傷等の事故の発生を警戒し、防止する業務」
規則1条4号 交通誘導警備業務(特定種別)「法規定の警備業務のうち、工事現場その他人又は車両の通行に危険のある場所における負傷等の事故の発生を警戒し、防止する業務(交通の誘導に係るものに限る)」
警備業法(昭和47年法律第117号)より引用
https://www.pref.hiroshima.lg.jp/
一般道路や高速道路の工事、商業施設の駐車場の出入り口などで車や歩行者の通行の誘導をおこない、交通の渋滞や歩行者の事故の発生をふせぐことを目的としています。もともと、工事現場の管理者や施設の管理者は、交通の安全の維持や渋滞などを発生させないように、担当者をおいておかなければならないと法律で決められています。ただし、建築業者の方や商業施設の担当の方は交通誘導を専門的に行っているわけではありません。
そこで、交通誘導に関して専門的な能力や知識を持つプロの警備員に安全管理を依頼することで、建設会社の社員の方や商業施設の方は、本業の作業に集中できます。また、専門の知識や技能をもった交通誘導員に安全管理を依頼する方が、より歩行者の安全を守り、交通の渋滞の防止につながります。
交通誘導警備は、通行する車に乗っている搭乗者、歩行する通行者の命に関わる業務となります。もし、交通誘導時に誘導を間違えて、本来止めるべき車を通してしまうと場合によって、歩行者にぶつかってけがを負わせてしまうこともあります。
交通誘導警備中は、一時も気を抜くことなく慎重に誘導を行う必要があります。また、交通誘導は交通整理とは異なります。交通誘導は交通整理と異なり、誘導の指示に従う法律上の権力はありません。そのため、車両や歩行者の誘導を行う際は、あくまで、通行するドライバーや歩行者に協力してもらう感謝の気持ちを持ち、それを態度で示すことが大切になってきます。安全の維持には、強い忍耐力と高い集中力が必要な業務です。
交通誘導警備業務の業務内容
交通誘導警備業務を行う場所は以下となります。
・一般道路、高速道路での交通誘導警備業務
道路工事やイベントなどで道路を使用する際、交通の流れに問題が発生し、事故が発生する危険が考えられる場合に、警備員は当日の交通状況の流れや変化を冷静に判断を行うことが求められます。冷静な判断を行うことで、道路工事中に通行する車両や歩行者交通事故の発生を避けるようにします。また、先を見越した誘導を行うことで、トラブルに繋がる状況を回避し、車両と歩行者の安全を守ります。
・建設工事の交通誘導警備業務
建設、建築工事が行われている現場の出入り口付近を通行する歩行者の安全確保や工事車両が安全に現場の搬入搬出ができるように誘導を行います。また、現場へ入る車両の管理や建設現場出入り口のカギの施錠などを行う場合もあります。それ以外にも、工事現場内の事務所の火気防火点検、不審者の侵入有無の確認など施設管理業務を並行して行うケースもあります。
・駐車場や症状施設出入り口での交通誘導警備業務
ショッピングモールやオフィスビルなどの駐車場の出入り口で、入場、退場を行う車両の確認や誘導を行います。週末のショッピングセンターなどは、出入り口で車両が混雑する場合もあります。その場合も交通誘導警備員は、車両のドライバーに協力を仰ぎつつ、冷静に誘導を行うことでスムーズな流れを作り、歩行者の安全を保っていくことが必要です。
駐車場内の誘導も大切です。視野の広い誘導を行うことで、駐車場空きスペースの有効活用ができます。空きスペースが有効活用できることでより多くの人の来場に繋がり、テナントの販売向上にもつながる大切な業務です。
交通誘導警備には、資格が必要なのか?
交通誘導警備になるためには資格が必要なのでしょうか?交通誘導警備を開始するために資格は不要です。しかし、交通誘導業務は、一つの誘導間違いが大きな事故やトラブルに直結します。誘導警備中は、広い視野と冷静かつ謙虚な判断が求められます。また、交通法規の習熟も大切となっています。そのため、交通誘導の技能を証明するために国家資格があります。
続いて、交通誘導警備員として、ステップアップする資格を説明します。第2号警備業務には、交通誘導警備業務と雑踏警備業務の2種類があります。それぞれに資格があり、交通誘導警備業務に関しては、交通誘導警備業務検定1級、交通誘導警備業務検定2級の2種類が存在します。それぞれ学科試験と実技試験があります。また、一般道路の交通誘導ができる資格、高速道路で交通誘導ができる資格とこちらも2種類に分かれます。
このように、交通誘導の技能を表す資格として、この4種類の資格があります。2級は、警備業の実務経験は不要ですが、1級は警備業の当該実務経験が1年以上必要となっています。1級と2級の違いは、1級は人数の多い配置場所、もしくは複数の現場の統括管理者としての役割、2級は少人数配置の現場、1カ所の現場のリーダーとしての役割が期待され、それぞれ各現場に1名は必ず配置されなければならないと法律で定めています。
また、高速道路の誘導にあたっては、歩行者がいない、通行する車両のスピードが速いといった高速道路特有の交通法規の理解が必要となっているため、一般道路と高速道路それぞれに資格が存在しています。試験に合格するためには、公安委員会が実施している試験を直接申し込みを行い受験する方法と指定講習機関による特別講習を終了する2つの方法があります。
まずは、警備の現場で実務経験をつみ、経験を積んだ後、資格を取得しリーダーや責任者へとステップアップも十分に可能です。警備会社によっては、資格取得講習の全額補助負担、資格取得者への資格手当支給を行っている場合もあります。求人サイトで調べる際に手当の点も調べてみることをおすすめします。
まとめ
交通誘導警備業務は、誘導警備中には常に広い視野で冷静な判断が求められる業務となります。その分、無事に事故がなく業務を引き継げた時には、やりがいを感じることが感じることができおすすめの業務となります。
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