警備員の服装は紺色をベースとしたものが多くみられます。一見すると警察官のような服装であるため、警備員が近くにいると場の空気が引き締まるような印象を受けます。
また、警備員の服装は警備会社によって若干異なっていますが、警備員の服装に一定の決まりはあるのでしょうか。
これから警備員として働こうとしている人や、現在警備員として働いている人も、警備員の服装に関する知識を理解して、警備服を適切に取り扱い、正しく着用しましょう。
警備員の服装について
警備業の服装は法律によって内容が定められています。下記は、警備業法第16条に定められている内容です。
警備業者及び警備員は、警備業務を行うに当たつては、内閣府令で定める公務員の法令に基づいて定められた制服と、色、型式又は標章により、明確に識別することができる服装を用いなければならない
(引用:警備業法)
警備員の服装が定められている理由は、指定された服装であれば、警備員であることが明確にわかるためです。
そのうえ、不審者の行動をけん制する効果も期待できるため、トラブルの発生防止にもつながります。
なお、上記の条文を読むと、警備員の制服は「内閣府令で定める公務員の法令に基づいて定められた制服」と識別できる服装とする、という内容が記載されています。
警備業務施行規則第27条には、内閣府令で定める公務員とは「警察官及び海上保安官」と定められています。
つまり、警備員の服装は、警察官や海上保安官の服装とは異なるものにする必要があります。
さらに、警備業務で着用する服装の色と型式、標章の内容については「服装届出書」という書類に記入して都道府県の公安委員会に提出することが義務づけられています。
警備員が業務で着用するものとしては、下記があげられます。
・ベスト
・制服
・ファン付き作業着(空調服)
・スラックス
・ベルト
・腕章
業務で着用するそれぞれのものについて説明します。
ベスト
警備員が主に着用するベストは、反射材がついている「安全ベスト」です。
安全ベストを着用して警備の業務をおこなうと、ベストについている反射材が光で反射するため、警備員自身の存在をまわりに知らせることができます。
特に、安全ベストの着用効果が高いのは、夜間に交通誘導の警備をおこなうときです。
夜間の交通誘導警備では、光を放つ「誘導棒」を使いますが、それに加えて安全ベストを着用することによって、ドライバーは警備員の存在に気がつきやすくなります。
夜間に交通誘導をおこなう警備員は、安全ベストを着用することで、交通事故に巻き込まれにくくなります。
なお、警備員がベストを着用することは法律で義務づけられていません。しかし、警備員が安全に警備をするためには、業務の内容に応じてベストを着用することは必須といえるでしょう。
制服
警備業法にも定められている通り、警備員は警備会社が都道府県の公安委員会に届出した内容の制服を着用する義務があります。
警備員は、定められた制服を着用することによって、周囲の人たちに警備中であることを示せます。
なお、警備員の服装は一見すると警察官とほぼ同じように見えることがありますが、警備員の服装は、法律で警察官のものとは異なるものにすることが定められています。
警備員の制服には、警備会社の標章がついていることで、警察官の制服と区別しやすくなります。そのほか、制服の腕の部分には腕章をつけます。くわしくは後述します。
ファン付き作業着(空調服)
ファン付き作業着とは、真夏の熱中症対策ができる作業着で、作業服の中にバッテリーで作動するファンが内蔵されています。
ファン付き作業着は、一般的には「空調服」と呼ばれることが多いです。
ファン付き作業着は、作業着の外側から内側に向けて外気を取り込みます。それによって汗の蒸発が早くなり、身体の温度が下がりやすくなります。
交通誘導業務のように屋外で警備をする場合、真夏は炎天下にさらされます。場合によっては警備中に熱中症になる可能性もあります。
真夏の警備でファン付き作業着を着用すれば、暑い中でも涼しさを感じやすくなるため、熱中症になるリスクを抑えられます。
スラックス
警備員が着用するスラックスは、その色合いやデザインは制服と一体化していることが多く、主に紺色のものが一般的です。
スラックスは警備をおこなうにあたっての機能性と快適性を兼ねそろえているため、作業性に優れています。
また、夏の暑い時期にも対応できるよう、速乾性や吸汗性の高い素材が使用された涼感のあるスラックスが支給されることもあります。
ベルト
ベルトは、スラックスを確実に着用するために必要です。ベルトでスラックスをしっかりと締めていれば、警備員としてきっちりとした印象となります。
しかし、ベルトをしっかりと締めずにスラックスがゆるい状態になっていると、だらしない印象になりかねません。そのようにならないように注意しましょう。
なお、警備員は、ベルトの上に「帯革(たいかく)」と呼ばれるベルト状のものも取り付けます。
帯革には警備で使用する道具を引っかけるための穴が多めに空いており、警戒棒や無線機、キーケースなどを穴に引っかけた状態で身につけます。
腕章
警備会社の標章は、制服の胸元のほかに、上腕部にも取り付けます。
先述した通り、警備会社の標章は警備員であることを示すためのものです。警備員を正面から見た場合は、制服の胸元の部分についている標章で警備員だと判断できます。また、横から見た場合は、腕章を見ると警備員だとわかります。
なお、腕章は左側の腕に取り付けます。その理由は、一説によると、中世の西ヨーロッパの国々が現在のイスラエルにある聖地「エルサレム」を奪還するための遠征軍である「十字軍」に由来しています。
十字軍の勲章は、人間の命の象徴といえる心臓が左側にあるため、左側に取り付けることとしました。それは時代を超えて受け継がれており、現代も左側に腕章を取り付ける習慣が根付いています。
警備員の制服は支給される?
警備員の制服は警備会社から支給されます。
ただし、原則としては「貸与」であり、制服は警備会社のものです。そのため、警備会社で警備員として勤務する間、制服を借り受ける形となります。
警備会社を退職する場合は、制服を警備会社に返さなければなりません。
警備員の制服が個人の持ち物とならない理由は、警備会社の制服が悪用される可能性があるためです。
もし、ある人が警備会社を退職した後、警備員の制服を着て警備員になりすますことも可能となってしまいます。場合によっては、警備員のふりをして何らかの犯行におよぶことも十分に考えられ、事件が発生する原因にもなりかねません。
そのような状態になることを防ぐため、警備員の制服はあくまでも「貸与」という形で支給されます。
まとめ
警備員の服装は、法律において「警察官や海上保安官と区別できる服装とする」という内容が定められています。
警備員の服装は、一見すると警察官のものと似ているため、警察官の服装と若干変わったデザインとするほか、胸部と上腕部に警備会社の腕章をつけて区別します。
また、警備員の制服の内容は、警備会社が都道府県の公安委員会に届出します。警備員は公安委員会に届出した形の警備服を着用しなければなりません。
警備服は警備会社から支給されますが、正式には「貸与」の形となるため、警備員の仕事を辞める場合には、警備会社に返す必要があります。
警備員として、警備服を着用するルールを厳守したうえで、日頃の警備をおこないましょう。
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