ここ数年、新型コロナウィルス感染の影響があり、世界全体の経済が停滞している中、底堅く売上高が推移している警備業界です。今回は警備業界の市場規模、警備員数、警備会社の売上高ランキングなど詳細を徹底的に解説します。
警備業の市場規模は?
警備業の市場規模は、2021年度の売上高は、3兆4,537億6,500万円となっています。新型コロナウィルスの影響もあり、前年度比0.6%減となっています。しかし、経済活動が世界的に停滞する中、警備業界の売り上げは、微減になっており、底堅くいといってよいでしょう。
警備業者数は、ここ数年、毎年増加しています。1996年には8669社でしたが、2021年においては10,359社と1万社を超えるまでになりました。また、警備員数も2016年には552,405人でしたが、2021年には589,938人と警備会社の増加にあわせて緩やかに増加しています。(参照 警察庁生活安全局 概況 https://www.npa.go.jp/ )
警備業は歴史が浅く、1962年(昭和37年)日本で初めての警備会社、日本警備保障(現セコム)が設立されました。それ以前には、警備業という考え方自体がありませんでした。警備業は、1964年(昭和39年)東京オリンピックをきっかけに、広く日本国内に認知されるようになりました。
その後、経済発展と足並みをそろえ、警備業も発達しました。その一端は、1966年(昭和41年)に新技術スタイルの機械警備が始まりました。機械警備の開発により、24時間の警備体制を整えることが可能となりました。それ以降も高度経済成長に伴うオフィスビルの建設ラッシュや日本全国における道路整備の拡大、バブル景気に伴うマンション施工の増加など時代の流れを受けて、警備の需要は順調に増加してきました。
警備業は、警備業法という法律で厳格に以下の通りに大別されています。第1号警備警備には、施設警備業務、保安警備業務、巡回警備業務、空港保安警備業務、機械警備業務が含まれます。商業施設、小中学校、病院、空港、介護施設など様々な場所で、その警備箇所に応じた警備をおこないます。第2号業務には、人が歩いている場所や車が通っている道路や、大勢の人が集まるイベント等、安全を守るために警備をおこなう、交通誘導業務と雑踏業務があります。
第3号業務は、銀行ATMなどの現金や宝石、美術品、核廃棄物物質などの放射性廃棄物を輸送する業務となります。最後に、第4号業務は、身辺警備の業務となり、要人や警護を委託された人の安全を維持するために警護を行う、いわゆるボディーガードです。
業務分類ごとの警備事業者数の状況は、日本の警備会社の半数以上は第1号警備と第2号警備のみを扱っている状況となっています。
警備会社の売上高ランキング
3.5兆円を超える巨大産業の警備業界です。それぞれの警備会社の売り上げはどのようになっているのか説明します。
2022年現在の売上高ランキングは以下となります。
1 セコム
2 綜合警備保障
3 セントラル警備保障
4 東洋テック
5 トスネット
6 共栄セキュリティサービス
7 アール・エス・シー
1位のセコムの2022年売上高は、1兆490億円、2位の綜合警備保障(ALSOK)が4890億円、3位のセントラル警備保障が690億円、4位東洋テックが270億円、5位トスネット99億円となっています。警備業界全体の売上高が約3.5兆円となりますので、上位5社で約1.6兆円となっており、半分以上の売上高を占める寡占状態となっています。セコムと綜合警備保障(ALSOK)の販売額が突出していて、2強状態です。
セコムの販売額は、セキュリティサービスが半分を占める中、防災、地理空間情報サービス、保険など幅広く手がけています。また2位の綜合警備保障(ALSOK)はセキュリティサービスが約8割を占めています。また、2012年に、介護の事業へも参入しており、両社とも事業の多角化をおこなっています。
また、2010年以降の傾向として、警備業界内外でM&Aが行われています。2019年には、綜合警備保障が総合管財、ヘルスサポート、京阪神セキュリティサービスをセコムがアロバを買収しています。2020年には綜合警備保障(ALSOK)がらいふホールディングスを、ALK(エルテス)があさひ安全警備社を買収しました。令和3年、アウトソーシングが、アーク警備システム、アークミライズを買収を実施しました。
2022年にもセコムがセノン、共栄セキュリティサービスがダイトーセキュリティを買収するなど毎年M&Aが行われています。また、コロナウィルス感染の中、安定した売上高を持つ警備業界に注目し、他業種からの買収も行われるようになっています。2020年のALK(エルテス)とアウトソーシングの買収が異業種からの買収参入にあたります。
AlK(エルテス)はITセキュリティ会社となります。警備会社のアサヒ安全業務社を買収しました。また、人材派遣業事業のアウトソーシングがアーク警備システムを買収する事例が発生しています。この買収も警備業界の景気に左右されにくい安定性を評価されてのものとなります。
このような買収が多くなる背景には、買収する側にとっては、警備対象商圏の拡大、スケールメリット、教育コストのおさえることができるといったメリットがあり、買収される側にとっては、安定した警備員の稼働ができる。従業員の維持もできるといったメリットです。今後も、警備員の不足を予測され、安定している警備員の確保、デジタル化に伴う投資資金の増加、効率的な運用、スケールメリットといった要因からM&Aが進む可能性が高いと思われます。
警備会社の所属警備員数について
次に警備会社の従業員数について説明します。業界最大手のセコムは、2022年3月末現在16,279人、業界2位の綜合警備保障(ALSOK)は12,002人(単独)、3位のセントラル警備保障が3886人(単独)4位の東洋テックが1072人(単独)、5位のトスネットが447名となっています。
警備員数が100人未満の警備会社は全体の89.8%となっており、1割の大企業と9割の中小企業で成り立っている業界といえます。
売上高と比較して、従業員数の割合が低くなっているのは、スケールメリットによる警備員の業務効率化、機械による警備の増加をすすめることで、警備の効率化を進めている影響が想定されます。
警備業界の特徴として、警備員が現場にて稼働する労働集約型の産業構造となっています。しかし、大手の2社を中心に、IT活用による警備費用の低コスト化を実現し、より幅広い顧客層へセキュリティサービスの提供を進めています。また、綜合警備保障(ALSOK)は介護業界へ、セコムと綜合警備保障(ALSOK)を中心に東南アジアを中心に海外事業へも進出を進めています。東南アジアも生活水準が向上し、安心と安全を守る必要性が出ていることに着目しています。日本の市場が今後大きな上昇が望めない中、世界に日本の警備業が広がっていく可能性も大きく期待されています。
まとめ
警備業界は、コロナウィルスの影響により、経済が停滞する中でも堅調に売り上げが推移する業界です。安全と安心は、これからの日本においても必要とされるサービスであることは間違いないと思われます。上位2社を中心に、今後ますますIT化とグローバル化が進むことが期待されています。
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