駐車監視員と聞いてピンとこない方も、町の中を緑色の制服と黄色いベストを着て仕事をしている方と聞くとピンとくるでしょう。駐車監視員は路上に駐車している自動車や自転車の近くで、機器を手に持ち作業を行っています。今回は、駐車監視員について業務内容や資格制度について説明します。
駐車監視員とは?
車両の駐停車違反の取り締まり業務は、2005年以前、警察官のみが行っていました。2006年6月1日に施行された改正道路交通法によって、駐車監視員制度が導入されたことで生まれました。
制度改正以降は、各都道府県の警察から民間の企業へ業務の委託を行い、駐車違反の取り締まり業務を駐車管理員が行えるようになりました。駐車管理員制度は導入以降、駐車違反車両の減少に大きな役目を現在まで果たしています。警察庁の統計によると、東京都内における違法駐車台数は、平成15年が約13万台でしたが、2020年度には5万台以下と半数以下となりました。
また、駐車台数の減少に伴い、駐車車両への衝突による交通事故も平成15年には年間3750件発生していましたが、2020年には942件まで減少し、3分の1以下となっています。この結果は、駐車監視員の方の日々の業務が数字となって表れています。駐車監視員は公共の安全を保ち、人々の安全を守る大切な仕事です。
駐車監視員は、警察官に変わり違法駐車取り締まりをします。そのため、駐車違反の取り締まりに関して、「みなし公務員」として取り扱われると法律で定められています。みなし公務員とは、駐車違反を行っている間は、警察官と同じく、公務員として法律上みなされる事を意味します。
みなし公務員とみなされるとは、駐車監視員が業務遂行中に、ドライバーや通行人から暴力行為をふるまわれた場合は、公務執行妨害という刑罰が成立します。状況によっては、公務員に暴力行為をしたとして逮捕されることもあります。駐車監視員は、業務上、危険な場合も想定されるため法律によって保護されています。
駐車監視員になるためには?
このように公共性のある仕事、駐車監視員になるためにはどうしたらよいのでしょうか?
駐車監視員になるためには、「みなし公務員」として責任ある業務を遂行する必要があり、資格を取得する必要があります。
資格を取得する方法は以下2つとなっています。
・駐車監視員資格者講習コースの受講
・認定考査コースの受講
このうち、認定考査コースは主に警察関係者が受講するコースとなっています。警察庁において、以下のとおり定められています。
数年以上の業務経験が受講要件となっています。つづいて、駐車監視員資格者講習コースとなります。こちらは、講習の受講にあたって業務要件は必要ありません。警察業務未経験の方はこちらのコースを受講することとなります。
しかし、以下の方は受講することはできません。
・18歳未満の者
・破産手続き開始の決定を受けて復権を得ない者
・禁錮以上の刑に処せられ、又は第119条の2の2第2項の罪を犯して刑に処せられ、その執行を終わり、又は執行を受けることがなくなった日から起算して2年を経過しない者
・集団的に、又は常習的に暴力的不法行為その他の罪に当たる違法な行為で国家公安委員会規則で定めるものを行うおそれがあると認めるに足りる相当な理由がある者
・暴力団員による不当な行為の防止等に関する法律(平成3年法律第77号)第12条若しくは第12条の6の規定による命令又は同法第12条の4第2項の規定による指示を受けた者であって、当該命令又は指示を受けた日から起算して2年を経過しないもの
・アルコール、麻薬、大麻、又は覚醒剤の中毒者
・精神機能の障害により確認事務を適正に行うに当たって必要な認知、判断及び意思疎通を適切に行うことができない者
・駐車監視員資格者証の返納を命ぜられ、その返納の日から起算して2年を経過しない者
兵庫県警察署より引用
https://www.police.pref.hyogo.lg.jp/
学歴や実務経験などは講習受講にあたって問われません。受講料金は全国一律で20000円となっています。各都道府県の警察署のホームページに研修日程の記載がなされますので、お住まいの県警察のホームページで日程を確認の上受講申し込みを行います。講習の日程は2日間で計14時間となっています。
講習の内容は、道路交通法を基本として、車両や道路について基本的な知識から実際に発生している違法駐車の問題点や警察が現在行っている対策や違法駐車削減へ向けての取り組みなどを学びます。主な学習項目は以下となります。
駐車対策に取り組む交通警察
違法駐車取り締まりのための仕組み
放置車両の確認事務に必要な基礎知識(1)
放置車両の確認事務に必要な基礎知識(2)
放置車両の確認・標章取り付けの実施要領
駐車監視員の責任
資料編
講習を受講後、約1週間後に終了考査(=修了試験)を受けます。
終了考査の試験形式はマークシート方式になっており、試験時間は1時間、全50問あるうち、45点以上正答できれば合格となります。90%の合格点は絶対となりますので1点でも足りなければ不合格となり、再度受講が必要となりますので注意が必要です。
試験はこの学科試験のみで、実務試験などはありません。学科試験に合格すれば、駐車監視員資格者証の交付申請を行うことができます。
駐車監視員は警備員って本当?
このように資格がないとなれない駐車監視員ですが、資格取得後すぐに業務につけるわけではありません。なぜなら、違法駐車の取り締まりの業務は、警察庁から民間の警備会社へ業務が委託されており、警備会社へ所属することで始めて業務を行うことができるからです。
駐車監視員の資格を取得後は、求人サイトなどで駐車監視員を募集している警備会社へ応募し採用されたのちに業務開始となります。給与に関して、駐車監視員はみなし公務員とされていますが、業務の間における取り扱いという点は注意が必要です。
給与に関しては所属する警備会社の雇用形態、給与規定に従います。例えば、同じ東京都内のエリアを監視する業務にあたっていても、所属する警備会社によって給与は異なります。また、駐車監視員は期間限定の職種となる場合が多く、契約社員やアルバイト採用が多くなります。
その理由として、各都道府県の警察から警備会社が業務の委託を受ける際に、委託契約が1年や半年など期間が区切られる場合が多いからです。契約更新がなければ、駐車監視員の仕事は必要なくなるため、正社員の募集がされにくいのが実状となっています。
求人サイトではシニア募集も含めて多くの求人が出ていますので、住まいの近くでの就業も十分に可能です。自身のプライベートも充実させたい。正社員にこだわらない方にオススメです。
まとめ
違法駐車の取り締まりといった公共性の高い仕事だけに、違反者からの暴力などの危険性もある仕事となります。しかし、駐車監視員のおかげで年々違法駐車が原因となる事故も減少しています。世の中の役に立ちたいと思っている方にオススメできる業務です。
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