警備員は定期的に研修を受けなければならない?現任教育について解説

目次

はじめに

警備員は人々の安全と安心を守るため「現任教育」と呼ばれる定期研修を受けなければなりません。改正された法律などにも対応できるように、知識や技能をアップデートする必要があるからです。この現任教育について概要や教育内容を解説します。

現任教育とは?

現任教育とは、すでに警備員として働いている人のための定期研修です。警備のプロフェッショナルとして必要な知識や技能を学び、警備員としてのレベルを維持・向上させることが目的です。

正社員・契約社員・アルバイトなど雇用形態にかかわらず、全員が受ける必要があります。警備員ではない営業職や事務職の人は不要です。

毎年1回(4月1日~翌年3月31日の期間に)受けなければいけません。警備業法で、教育項目や時間も定められています。ただし資格の有無によって、教育時間が短縮されたり、免除されたりします。

現任教育には「基本教育」と「業務別教育」があります。基本教育は、すべての業務区分に共通する基礎項目。業務別教育は、各業務区分に特化した専門項目を学びます。

警備業務には4つの業務区分があります。施設警備の1号業務、交通誘導・雑踏警備の2号業務、運搬警備の3号業務、身辺警備の4号業務です。

■教育時間と免除

資格のない警備員の教育時間は、基本教育と業務別教育あわせて「10時間以上」です。2回にわけて実施する会社が多いです。現任教育は労働時間に含まれるため、給料が支給されます。

「警備員指導教育責任者」と「警備業務1級検定」の資格取得者は、取得した業務区分に就いている場合、基本教育と業務別教育がともに免除。取得した業務区分以外の場合は基本教育のみ免除され、業務別教育は「6時間以上」に短縮されます。

「警備業務2級検定」の資格取得者は、取得した業務区分にかかわらず基本教育が免除され、業務別教育は「6時間以上」に短縮されます。

2019年に警備業法が改正されたことにより、教育時間は従来の16分の10に短縮されています。たとえば以前は、資格のない警備員は半年ごとに基本教育3時間以上、業務別教育5時間以上となっており、1年あわせると合計16時間の教育が必要でした。

■教育実施者と場所

現任教育は「警備員指導教育責任者」という国家資格取得者が実施します。警備会社は、業務区分ごとに警備員指導教育責任者を配置しているので、自社で教育を実施することが多いです。

スケジュールの都合などで、自社での教育が実施できない場合は、各都道府県警備業協会の研修センターなどでも受けられます。

東京都警備業協会では基本教育6時間、業務別教育6時間をそれぞれ別日で実施しています。偶数月に基本教育(月3回)、奇数月に1号業務の業務別教育(月3回)、5・8・11・2月に2号業務の業務別教育(月1回)といったスケジュールです。

2019年の警備業法改正により、電気通信回線(インターネット)を使用して行う講義も可能になりました。ただし対面による講義と同等の教育効果を担保するため、以下4点の条件があります。

1.受講者が本人であることを確認できる。
2.受講者の受講状況を確認できる。
3.受講者の警備業務に関する知識の習得状況を確認できる。
4.質疑応答の機会が確保されている。

■服装や注意点

自社での現任教育は制服で受けます。警備業協会での教育は、都道府県によって私服のところもあれば、各社の制服着用を指定されるところもあります。

私服のところでも、警備員としてふさわしい服装とされています。Tシャツやタンクトップ、ジーンズ、ハーフパンツ、サンダルなどはふさわしくありません。

遅刻や早退は厳禁です。教育時間は規定のものなので救済措置はありません。授業態度が悪い場合も退席させられることがあるので注意しましょう。

現任教育の内容について

現任教育の教育項目は警備業法で定められていますが、具体的な内容や方法については各警備会社に委ねられています。

すでに警備員としての経験があるので、実際にあった事故やクレームなどについて分析や討論をするなど、ケーススタディを通して実践的な教育をしている会社も多いです。

■基本教育

教育項目は、以下の3点です。

1.警備業務実施の基本原則
2.警備業務の適正な実施に必要な法令
3.事故発生時における警察への連絡や応急措置

警備業法第15条が基本原則です。警備員には特別な権限が与えられていないこと、他人の権利や自由を侵害したり、個人や団体の正当な活動に干渉したりしてはいけないことを再確認します。

警備員は警備業法のほかに、憲法、刑法、刑事訴訟法、遺失物法も学びます。法律が改正されていることもあるので、知識のアップデートが必要です。

事故発生時は負傷者の救護とともに、警察へスムーズに引き継ぐための連絡と現場保存が重要になります。

制服や装備品が正しく着用・使用されているか再点検したり、敬礼や整列などの基本動作を再訓練したりもします。

■業務別教育(施設警備)

教育項目は、以下の5点です。

1.人や車両などの出入管理
2.巡回方法
3.警報装置など機器の使用方法
4.不審者や不審物を発見した場合の措置
5.そのほか警備業務を適正に実施するために必要な知識と技能

警備員が出入管理や巡回警備をすることにより、事件・事故・火災を未然に防げます。施設警備には、センサーなどの防犯機器だけでなく、火災報知器などの防災機器、消火栓などの消防設備もあります。それぞれ取り扱いの知識や緊急対応できる技能が必要です。

不審者や不審物を発見した際には、受傷事故に十分注意しなければなりません。警備員には特別な権限がないため、警察へ引き渡すことが基本です。

不審者であれば、ひとりで対応せず応援を呼び、警察が来るまで不審者を見張ります。不審物であれば爆発物や化学薬品の可能性があるので、けっして触ったり、においを嗅いだりしてはいけません。周囲を立ち入り禁止にして警察を待ちます。

さまざまなケーススタディを通して、実際の現場に即した留意点などを学びます。

■業務別教育(交通誘導・雑踏警備)

教育項目は、以下の5点です。

1.道路交通関係法令
2.車両や歩行者の誘導方法
3.人や車両の雑踏する場所における整理方法
4.各種資機材の使用方法
5.人や車両の雑踏する場所や通行に危険のある場所での事故措置

交通誘導・雑踏警備には道路交通法の知識が必要です。道路交通法に違反して車両や歩行者を誘導した場合、交通の混乱や事故を招くことなります。

交通誘導には多くのケースがあります。たとえば歩行者の多い繁華街での工事車両誘導、交通量の多い大型道路や高速道路での交通規制、交差点がからんだ複雑な片側交互通行などです。それぞれの状況に応じて留意点が異なります。

警備員には特別な権限が与えられていないため、警察官のように法的拘束力のある交通整理はできません。交通誘導は任意の協力要請なので、いくつものケーススタディを通して、より安全でクレームのない誘導方法を学ぶ必要があります。

事故が発生した場合は負傷者の救護とともに、特に交通量の多い場所では二次災害の防止が重要です。

まとめ

警備員になったら「現任教育」と呼ばれる定期研修が必要です。警備のプロフェッショナルとして、人々の安全と安心を守るために必要な知識と技能をアップデートします。

教育項目は警備業法で定められていますが、具体的な内容や方法は各警備会社に委ねられています。すでに警備員としての経験があるので、さまざまなケーススタディを通して、実際の現場に即した留意点などを学ぶところも多いです。

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