派遣社員は警備員になることはできない?その理由とは?

目次

はじめに

派遣社員という雇用形態は、正社員より流動的に雇用または労働できるため、多くの会社や人に選ばれています。

とても便利な雇用形態ですが、警備業務は、人々の安全と安心を守る特殊な業務です。その専門性と危険性から、労働者派遣法では、警備業務に対して労働者派遣事業をおこなってはならないと禁止しています。

警備会社における「派遣」という言葉にも、注意が必要です。警備員として仕事をするにあたって「派遣契約」と「請負契約」の違いをしっかり認識しておかないと、知らないうちに法律違反をしてしまう可能性もあります。

法律関係は難しく敬遠しがちですが、労働者を守るためにあります。簡単に解説していますので、ぜひご参考にしてみてください。

派遣社員が警備員になれない理由

派遣社員は、警備員になることができません。なぜなら、派遣会社が警備業務に従事する人材を派遣することは、法律で禁止されているからです。

労働者派遣法(正式名称:労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律)では、次のように記されています。

第四条 何人も、次の各号のいずれかに該当する業務について、労働者派遣事業を行つてはならない。

三 警備業法(昭和四十七年法律第百十七号)第二条第一項各号に掲げる業務その他その業務の実施の適正を確保するためには業として行う労働者派遣(次節並びに第二十三条第二項、第四項及び第五項において単に「労働者派遣」という。)により派遣労働者に従事させることが適当でないと認められる業務として政令で定める業務

引用:労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律 – e-Gov法令検索
https://elaws.e-gov.go.jp/document

警備業務は、人々の安全と安心を守る特殊な業務です。その専門性と危険性から、派遣社員が警備業務をおこなうことは認められていません。警備のプロフェッショナルである警備会社が、直接雇用した人材を指導および監督することにより、警備業務は適正に実施されると考えられています。

派遣社員が、けっして人材的に劣るわけではありません。しかし、専門外の派遣会社が警備業界に大量参入すると、警備業界に悪い影響が出てしまう可能性はあります。警備員の派遣は、専門の警備会社に制限したほうが、警備業界のレベルと信頼性は高く保たれるでしょう。

たとえ「警備員」という名目で派遣されていなくても、派遣社員が警備業務とみなされることをすることも法律で禁止されています。厚生労働省による「労働者派遣事業関係業務取扱要領」に、警備業務は適用除外業務として記されています。

1 適用除外業務に係る制限

何人も、次のいずれかに該当する業務について、労働者派遣事業を行ってはならない(法第4条第1 項)。

③ 警備業法(昭和47年法律第117号)第2条第1項各号に掲げる業務

2 適用除外業務の範囲

(4) 警備業務

イ 1の③の警備業務に相当する業務は、次に掲げる業務をいう。

(イ) 事務所、住宅、興行場、駐車場、遊園地等(以下「警備業務対象施設」という。)における 盗難等の事故の発生を警戒し、防止する業務

(ロ) 人若しくは車両の雑踏する場所又はこれらの通行に危険のある場所における負傷等の事故の 発生を警戒し、防止する業務

(ハ) 運搬中の現金、貴金属、美術品等に係る盗難等の事故の発生を警戒し、防止する業務 ・ 現金、貴金属、美術品等の運搬に際し、その正常な運行を妨げるような事故の発生を警戒 し、防止する業務をいう。

(ニ) 人の身体に対する危害の発生を、その身辺において警戒し、防止する業務

引用:第2 適用除外業務等 – 厚生労働省
https://www.mhlw.go.jp/content/11650000/

たとえば、次のような状況が定常的にあると、派遣社員が警備業務をしているとみなされ法律違反になります。

「レジャー施設の受付スタッフとして派遣された人が、施設の入口で危険物の持ち込みがないか手荷物検査をしている」

「スーパーの品出しスタッフとして派遣された人が、商品が万引きされないよう監視したり、実際に万引き犯を捕まえたりしている」

「ショッピングモールの案内係として派遣された人が、モール内で行列の整理や、駐車場で交通誘導をしている」

「家電量販店の販売スタッフとして派遣された人が、売上金が安全に運搬されるよう警戒にあたっている」

もちろん、会社に直接雇用されているスタッフであれば、法律違反ではありません。派遣社員として現場に派遣されて、このような警備業務とみなされることを定常的におこなっていると、問題になる可能性があります。

派遣会社が警備業務に従事する人材を派遣すると「1年以下の懲役または100万円以下の罰金」に処せられる場合があります。また、業務改善命令や事業停止命令、さらには労働者派遣事業の許可の取消しに及ぶことにもなりかねません。

派遣元の派遣会社だけでなく、派遣先の発注者にも指導や助言がなされます。引き続き法律違反のおそれがある場合は、是正勧告もなされ、さらに従わない場合は会社名が公表される対象となります。

故意でおこなっているのは論外ですが、法律を知らないで警備業務とみなされることをしているケースは十分に考えられますので、注意が必要です。

警備業界の「派遣」とは?

警備会社が「警備員を派遣します」と言う場合、この派遣は「派遣契約」のことではありません。一般的に警備会社は、発注者と「請負契約」を結びます。警備員を派遣することで、現場の安全と安心を請け負いますという契約です。

そのため、警備会社の言う「警備員を派遣します」は、正確に言うと「警備業務を請け負います」になります。

「派遣契約」と「請負契約」の違いは、指揮命令権の所在がどこにあるかがポイントです。派遣契約の指揮命令権は、派遣先(発注者)にあります。請負契約の指揮命令権は、派遣元(請負人)にあります。

警備業務は発注者ではなく、請負人である警備会社が責任をもって指揮命令しなければなりません。そのため、逆に発注者が、派遣されてきた警備員に契約外の仕事をさせることも労働者派遣法違反になります。

たとえば、工事現場に派遣されてきた警備員に、現場の掃除や運搬作業などをさせてはいけません。指揮命令権が発注者にあるのは派遣契約となるので、これは偽装請負とみなされます。

偽装請負が発覚すると、許可を得ずに労働者派遣事業をおこなったということで、警備会社だけでなく発注者も「1年以下の懲役または100万円以下の罰金」に処せられる場合があります。

労働者派遣法では、次のように記されています。

第二条 この法律において、次の各号に掲げる用語の意義は、当該各号に定めるところによる。

一 労働者派遣 自己の雇用する労働者を、当該雇用関係の下に、かつ、他人の指揮命令を受けて、当該他人のために労働に従事させることをいい、当該他人に対し当該労働者を当該他人に雇用させることを約してするものを含まないものとする。

第五条 労働者派遣事業を行おうとする者は、厚生労働大臣の許可を受けなければならない。

第五十九条 次の各号のいずれかに該当する者は、一年以下の懲役又は百万円以下の罰金に処する。
二 第五条第一項の許可を受けないで労働者派遣事業を行つた者

引用:労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律 – e-Gov法令検索
https://elaws.e-gov.go.jp/document

発注者からの指示ではなく、警備員が自発的に契約外の仕事をする場合も注意が必要です。よかれと思って現場の掃除や運搬を手伝ったことで、それが事故につながる可能性もあります。

警察の調査が入った場合、偽装請負で契約外の仕事をさせていたのではないかと、疑いの目がかけられないともかぎりません。警備業務以外の仕事をする必要があるときは、警備会社からの指揮命令であることを確認してからするべきです。

同じ警備業務だからといって、警備会社Aが、ほかの警備会社Bに人を派遣することも禁止されています。

指揮命令権が、派遣元の警備会社Aにあれば請負契約となり問題にはなりません。しかし、派遣先の警備会社Bの人手が足りないからといって、警備会社Bの指揮命令下に入って仕事をするのは、派遣契約となり法律違反になります。

アルバイトは警備員になれる?

アルバイトは、警備会社に直接雇用されているので、警備員になることができます。正社員や契約社員として就職することにハードルが高いと感じる方は、アルバイトとして警備員になるのも一手です。

まとめ

警備業務は人々の安全と安心を守る特殊な業務です。その専門性と危険性から、派遣社員が警備業務をおこなうことは認められていません。

そのため、警備員になるためには、正社員や契約社員として就職したり、アルバイトとして採用されたり、警備会社に直接雇用される必要があります。

警備のプロフェッショナルである警備会社が、直接雇用した人材を指導および監督することにより、警備業務は適正に実施されると考えられています。

派遣会社から、警備員として派遣されるのはもちろんのこと、警備員として派遣されていなくても、警備業務にあたることを定常的におこなっていると、法律違反とみなされる可能性があります。

警備員として仕事をするにあたって「派遣契約」と「請負契約」の違いをしっかり認識しておくことは重要です。

大事なポイントは、指揮命令権の所在がどこにあるかです。派遣契約の指揮命令権は、派遣先(発注者)にあります。請負契約の指揮命令権は、派遣元(請負人)にあります。

警備員は発注者のもとに派遣されて仕事をするので、発注者の指示に従ってしまいがちです。しかし、これは偽装請負とみなされ労働者派遣法違反になります。

指揮命令権は所属の警備会社にあることを忘れてはいけません。法律は難解で面倒ですが、労働者の身を守るためにあります。

警備会社も発注者も、知らなかったでは済まされないこともありますので、注意が必要です。

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