警備業界は人手不足?その理由について解説!

少子高齢化が進んでいる日本では労働力人口が年々減少しています。人手不足は多くの業界で問題となっており、労働力の確保に頭を悩ませていますが、それは警備の業界も同様です。

特に、警備業界では他の産業と比べると有効求人倍率が高いため、人手不足の原因は単に労働力の減少が影響しているだけでなく、他の要因があることも考えられます。なぜ、警備業界では人手不足が深刻な状況になっているのでしょうか。

この記事では、警備業界で人手が不足している原因について説明します。

目次

警備員の人手不足の状況

警備員の人手不足の状況について調べるために、厚生労働省が公表している「一般職業紹介状況(令和4年9月分)」を参照します。

それによると、警備員が含まれる職種である「保安の職業」の有効求人倍率は7.15倍でした。なお、全ての職業の有効求人倍率は1.20倍です。

保安の職業に含まれる職種は、自衛官や警察官、消防士なども含まれるため、上記に示した求人倍率は純粋に警備員の求人倍率を示していません。

しかし、全ての職業の有効求人倍率が1.20倍であることを踏まえると、警備員を含む保安の職業の有効求人倍率は非常に高い数値を示していることがわかります。

出典:厚生労働省 一般職業紹介状況(令和4年9月分)
https://www.mhlw.go.jp/content/11602000/001003849.pdf

また、警備員は60歳以上の人が多く働いている点も特徴的といえます。50代以下の警備員のみでは人員不足の解消につながりにくいためか、警備会社では60歳以上の人も積極的に採用しています。

見方を変えれば、警備員の人材不足は、高齢の労働者によって多少なりとも緩和されている一面があるといえます。

警備業界が人手不足の理由は?

警備業界が人手不足の理由としては、下記のことが考えられます。

・警備の需要は常に多い
・体力や精神力を必要とする
・拘束時間が長い場合がある

それぞれの内容について説明します。

警備の需要は常に多い

警備業界が人手不足の理由としては、警備の需要が常に多いことがあげられます。警備の需要が特に高いのは、施設警備や雑踏・交通誘導業務です。

警備が必要な施設としては、商業施設やオフィスビルなどがあり、大型の建物が多いほど警備員の需要も高まります。

さらに、道路工事やビルの建設は至る所で行われていますが、これらの現場では交通誘導をするために警備員が必要です。

警備の需要は常に多いものの、その需要に応じた警備員の数を確保することは難しいため、結果として人手不足の状況で業務を行わなければならない状況となります。

警備の業務で人手不足がなかなか解消しない理由については、体力や精神力を必要とする業務であること、拘束時間が長いことがあげられます。くわしい内容は次の項目で説明します。

体力や精神力を必要とする

警備の業務は体力や精神力を必要とします。体力や精神力が続かない人にとっては、警備の仕事がつらいと感じることもあるでしょう。

例えば、施設警備の場合、日中のみならず、夜間の警備も行わなければならない場合があります。場合によっては、24時間拘束される勤務もあるため、長時間にわたる勤務、そして深夜の業務がつらいと感じることもあるでしょう。

また、交通誘導警備は、晴れた日に限らず雨の日や風の日であっても、暑い日も寒い日も毎日のように屋外で交通誘導を行う必要があります。

交通誘導は天候にかかわらず行わなければならないため、体力が消耗するだけでなく、精神的にもつらいために心が折れそうになることもあり得ます。

このように、労働環境が厳しい警備員の業務は体力的、精神的にきついと感じやすいために、長期間にわたって働くことができない人もいるのが現状です。結果として人手不足につながりやすくなります。

拘束時間が長い場合がある

警備業界が人手不足になりやすい理由として、勤務によっては拘束時間が長い場合がある点です。

施設警備や雑踏・交通誘導警備は、原則として常にその現場にいなければなりません。そのため、8時間労働になることが多いです。特に、施設警備においては24時間拘束の勤務になることもあります。

24時間勤務の働き方について例をあげると、当日の午前9時に出勤して翌日の午前9時までの勤務となります。日中に約8時間の勤務をした後、夜間から翌朝にかけて約8時間の勤務を行います。

残りの時間は休憩時間となり、食事を取ったり仮眠を取ったりします。

つまり、1回の勤務で2日分の業務をまとめて行う形となります。その分、休日もまとめて取ることができます。

しかし、実際に24時間勤務を行ってみると、勤務時間が非常に長く感じられ、終わりがみえないように感じることがあります。しかも、深夜に何らかのトラブルが発生すれば、仮眠をするはずの時間帯であってもトラブルの対応をしなければなりません。

このような働き方がつらいと感じる人にとっては離職につながりやすくなり、定着率が低い原因となってしまいます。

コロナ禍においても警備の需要は高い状況

2020年以降、新型コロナウイルスの感染が拡大してからは、感染防止の観点から営業を自粛する企業が増えたり、公共工事を一時的に中断したりするケースが増えました。

それにより、警備の需要は低下するとみられたものの、実際には需要の低下はさほどみられない状況でした。

中高年向けの転職サイト「ミドル シニアお仕事ナビ」では、2021年2月から3月にかけて、インターネットを利用してコロナ禍における警備業の実態調査を実施しました。

同調査において、コロナ禍における業務量の変化について質問したところ、半数近くが「業務量は変化していない」と回答しました。

なお、「少し増えた」と「非常に増えた」と回答した人は27%、「少し減った」と「非常に減った」と回答した人も同じく27%となり、警備の内容によっては仕事が減っただけでなく、仕事が増えているケースもあることがわかります。

出典:ミドル シニアお仕事ナビ コロナ禍における警備業の実態調査
https://senior-navi.work/contents/pr/pr14/

コロナ禍においては、営業自粛の影響により警備の業務が少なくなることがある一方で、警備員が新型コロナウイルスに感染すると出勤できる警備員が一時的に減少するため、結果として忙しくなることもあり得ます。

また、警備の業界は慢性的な人手不足に悩まされているため、警備の業務が少なくなったとしても人手不足の状況はさほど変わらなかったことが考えられます。

「業務量は変化していない」と回答した人が多かった背景としては、人手不足が続いており、常に忙しいと感じていたためとみられます。

まとめ

警備員の業種が含まれる「保安の職業」の有効求人倍率は、2022年の時点で7倍を超えており、他の業種と比べると際立って高い状況となっています。

警備の業界で人手不足となっている原因としては、警備の業務は体力や精神力を必要とすることに加え、長時間にわたる業務も行わなければならないことがあげられます。

交通誘導警備で悪天候の中で業務を行ったり、24時間にわたる勤務が多かったりすると、つらいと感じてしまうこともあるでしょう。

警備の業界で人手不足の解消を図るためには、警備を行う施設に監視カメラを増やし、少ない人員で効率的に警備を行うなどの工夫も必要となります。警備員にとって働きやすい環境づくりに努めることが、人手不足を解消するためのカギになるとみられます。

(画像は写真ACより)

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